第一歩 ページ19
上司が煙草のために席を外している隙を見て、練り直した企画書をそっと上司の机に置いて
今度は出張のためターミナルから逃げるように速足で出て行く
ターミナルから出たこの瞬間に少し解放された気がしてほっとして、
食べ損ねていたお昼ご飯…というか手軽に摂取できる高カロリーな栄養バーを移動しながら食べる
こんなみすぼらしい食事シーンを街をすれ違う人々に見られてはクスクスと笑われている気がして
恥ずかしいがこれが今日唯一の栄養摂取かもしれないと思うと食べずにはいられない
カツカツと地を鳴らすパンプスの音も動くたびに擦れるスーツの音も大嫌い
ふと周囲を歩く人を見渡せば1人と1体?、前方から黒い服を着た集団に追いかけられて走ってくる
黒い服の集団はきっと新選組
ということは追いかけられているのは指名手配の人物と生物
というかあの白いのは何だ?天人?
沖「待てぇ!かーつらー!!」
桂と呼ばれる人物は男にしてはやけに長い髪と端正な顔立ち、逃げる姿にもどこか品があって知性を感じさせ、思わず足を止めてしまった
――私とは大違いだ
どちらにせよ桂という男は私が住む世界には存在しないタイプの人物のようだ
はっとして腕時計を見ると数分経過していて、秒針を見ながら走り始めた
――今考えればこれが私の人生が変わる第一歩だった
?「そこを退いてくれ!」
前方から聞こえた焦りの中にある品のある男の声と足音
その音から走っているのは確かだ
腕時計から目を離して顔を上げて声のした方を見れば先程見惚れていた長髪の男が目の前にいる
無理だ、避けられない――
これから起こるであろうことを瞬時に察知すると私と男の動きは全部がスローモーション
スローモーションとは感覚だけのことで現実には起こっていないのは火を見るよりも明らかで
「きゃっ!」
気づいたときには男と正面衝突というただの事故を起こして、互いに地面に身体を付けていた
…正しくは私だけが倒れ、男は体幹が強かったのかその場に立っていた
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時