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ため息混じり ページ16

「小太郎さん、外はまだ肌寒いです」









「小太郎さんの羽織を取ってきますね」










桂「いやいい、自分の物だ、自分で取ってこよう」










「いえ、私に付き合ってくれるのでしょう?


 それくらいさせて下さい」









桂「なら頼む


  先に月を眺めていても良いか?」









「勿論です、今夜は満月だそうです」











小太郎さんは「そうか」と言い、穏やかな笑みをこちらに向けた後、私に背を向けて外は出る












…今夜は満月のようで満月じゃない













満月は高杉さんと見たい











そんな醜悪な心が生んだ小さい嘘











穏やかにならない心中とは裏腹に嘘を作り出す脳と吐き出す口はいつにも増して冷静で達者だった
















パタパタと薄暗い廊下を彼の羽織を持ち寝室へ早足で向かう







寝室に入り、以前隠したタンスの奥底に高杉さんに会いたいという浮ついた心と共に再度しまい、自分の地味な羽織を取り出す










小太郎さんに怪しまれずに隠せた安堵と
来月まで会えない寂しさから
ため息混じりで深呼吸をする














少し怒られるかもしれないけど、ただ高杉さんと知り合った、と言えばいいだけ








だけどそれが言えないのは私が高杉さんを想うところがあるから










言っても言わなくても小太郎さんを傷つけるのなら、
この平穏な日々を送る方が小太郎さんの悲しい顔を見なくて済むかもしれない


















「ごめんなさい、すき…」



















伝えたくても伝えられない、誰かに向けた言葉は暗闇に溶けていく













ーー結局、自分が大事なだけ













分かりきったことを掻き消すように、もう一度大きく深呼吸をして小太郎さんの羽織を取り出して、彼が待つ外へ向かった

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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時

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