不可抗力 ページ13
高杉さんがいたであろう桜の木
その木にそっと触れれば彼の温もりがまだ残る
――会いたかったな、一目だけでも…
きゅっと胸が締め付けられる感覚
たった一晩で高杉さんの魅力に気づいて、二晩で見事に落ちた
この世に高杉さんの魅力に落ちない人なんているのだろうか
友達になってほしいと言い出したのは私の方なのに、高杉さんに友達以上の感情を抱いているのは間違いない
――そう、これは不可抗力だ、仕方ない
今はこう思わないと夫への罪悪感で押し潰されてしまいそうで怖かった
木に凭れかかる様にぽつりと1人で座れば、確かにそこにいたと存在を明確にする彼の香り
さっきまでの恐怖はなくなり、高杉さんともっと一緒にいたかったという強欲で汚い自分が顔を見せる
『満月の晩にしか此処に来ねぇ』
高杉さんの言っていたことが変に気になった
今日は満月じゃないのに彼はいた
もしかしかたら満月の晩にしか姿を現さない、ということだろうか?
それ以外の日は今晩みたいに声だけってことなのかな
高杉さんのことをもっと知りたい、あの声を聞きたい、と本能が叫んでいる
友達もろくにいない主婦があんな別世界にいるような人と接したら、そりゃね、こんな気持ちになるのも当然だ
高杉さんのことを考えれて、貰った羽織を抱きしめれば、彼の香りに包まれて、きゅうきゅうと胸が鳴り苦しい
早く会いたい、浮かれている自分が恥ずかしいけど、会いたくて、次会える機会までゆったりと流れるであろう時間がもどかしい
…明日も来たりするのかな
でも流石に3日連続で深夜徘徊は危険だよね、新選組に見つかったらそれこそ一大事だ
小太郎さんに万が一見られたら言い訳のしようもないな、とやっと夫のことを思い出した瞬間、今の状況を冷静に考えてしまう
――これは不倫の領域に入ってしまうのだろうか
ザワザワと心を揺らす高杉さんの羽織を自分の身に纏う
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作者名:るう | 作成日時:2022年9月20日 18時