銀の幻【坂田銀時】 (ページ30)

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酒ページ30

どこに行くかと話し合うが、こんな夜更けに街に出ても光っているのはキャバクラやホストの店ばかりで、2人で飲むには少し騒がしい

2人で顔を見合わせ苦笑を浮かべ、私の部屋で飲むことになった

有り合わせのおつまみとまだ栓を開けてから数えるほどしか口にしていない日本酒を用意して、銀さんの杯に注ぐ

透き通る日本酒に月を映し、くるくると数回弄んだ後、月を呷り「美味い」と微笑む銀さんはとても様になってる

この人のどこからこんな異常なまでの色気が出てくるんだろう

「酔ってしまいそうです…」

銀「はあ？お前まだ一滴も飲んでねぇじゃん」

「ふふ、そうでしたね」

そうじゃなくて、私が酔ってしまいそうなのは銀さんの方

いやもう既に銀さんから漏れる銀色に随分と前から酔っている

こんなこと伝えたら嫌われちゃうかな？

日本酒を一口飲めば、さらっと甘く旨みが口いっぱいに広がって自然と口角が上がる

銀「俺も酔っちまいそうだ」

「もうですか？」

銀「ああ、良い酒だ」

月明りが差し込む薄暗い部屋に程よくふわりと香る日本酒

雰囲気酔いだとは思うけど、銀さんが言った通り少しの量で気持ちがふわふわとしてくる

他愛のない話を酒のつまみに、遅くまで時間を共に過ごし、雰囲気酔いから本格的に酔いが回り始めた

久しぶりの飲酒で急激な眠気が襲い、こくりこくりと舟を漕ぎ夢と現実を往復して、どちらの世界にいるかよく分からなくなった頃

もう半分しか開いていない私の瞳にはアルコールが回り少し頬を赤く染めた銀さんと、私が作り出した眼鏡の銀さんが重なって映る

――やっぱり私はこの人の名前を知ってる

「ぎん…ぱち、せんせ…」

その人の名を口に出すとしっくりとくる

でもどこで会ったのかなんて思い出すのは今のこの頭では到底無理なこと

手に持っていた美酒が私にもたらすのは感覚の鈍磨

銀「俺は銀時だ」

「ぎ…ぱち…」

銀「銀時だって言ってんだろ」

それと、私の奥深くに刻まれた遠い憧れの様に懐かしい、

酒が香る柔らかい唇の感覚——