銀の幻【坂田銀時】 (ページ12)

今日:2 hit、昨日:8 hit、合計:21,179 hit

デートページ12

「ど、え、何で？！」

銀「色気ない声出すもんじゃねぇよ、まあ落ち着け

　俺も混乱してんだ」

混乱しているという割には落ち着いた声色で経緯を話し始めた

事情を聞けば、神楽ちゃんと新八君は当日になって謎の腹痛と頭痛に見舞われてしまい、今日は行けないと棒読みの台詞を放ったようだ

それで、ドタキャンするなと強めに言われた銀さんが1人で来て現在に至るらしい

うんうん、なにか裏を感じないわけにはいかない事情だ

じゃあ今日は銀さんと2人きりってことか
…え、2人きり？それって

「デートみたい…」

銀「おめっ…それ言うなって！

　俺はな？そうだけどそうじゃねぇと
　自分にどんだけ言い聞かせてきたと思ってんだ！」

「銀さんもデートだって思ったんですね」

私の一言で慌てふためく三十路手前のおっさんはもはや十代の初心な少年のようで

もっとこんな銀さんが見たいと思い、ついいじめたくなってウズウズする心を静める

なによりもこの状況をデートだと思ってくれたことを知って嬉しいと思わない方がおかしい

だってデートだなんて少しでも好意がないと、きっとそう思わないよね？

そう思えば思う程、頬の筋肉が緩んでいく

いや、もう少し前から緩み切ってる

一応綿あめで隠してはいるものの、たぶん銀さんにはバレてるに違いない

また今日も銀さんが好きだと心が叫び、喉から声が漏れてしまいそうになる

銀さんをちらりと見れば彼も手で口元を隠していたけど、目線はこちらに向けられていて、ぱちっと目が合う

それがきっかけで、ばッと顔を逸らせる

こんなことするのは十代の学生たちがする恋愛模様で、しかも銀さんに至ってはアラサーだ、かなり痛いのかもしれない

けどそんな痛くて恥ずかしいことでも銀さんとなら何だって構いやしないんだ

銀「気を取り直してするか、デート」

「は、はい…！」

きゅうっと苦しくなったのと同時に胸中はぶわっと満たされていく

これが夏の魔法なのかもしれない

柄にもなく厨二臭いことを思ってしまうのもきっと夏の魔法のせい

「手でも繋ぎますか？」

銀「あんま大人を揶揄うなっての」