- 恋愛掌編 - 【ars K.N】 (ページ4)

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「……A」

　散りゆく花びらが終わりを告げる頃、二宮くんは隣にやってきた。

「少し…じっとして」

　花火を持つ私の手首に器用な指先が何かを取り付けたその瞬間、赤い蕾がポトンと音を立てる。

「あ、終わっちゃった」

　二宮くんは寂しげな声を落とした後、私の手を握った。

「A…誕生日おめでとう」
「二宮くん、覚えててくれたの？」
「うん…。だからこれは俺からのプレゼント」
「ありがとう……すごく嬉しい」
「ちゃんと付けててよ？家帰って捨てられたりしたら泣いちゃうからね」

　そんな彼のお願いに、私は心から頷いて

「ふふ…そんな事しないよ。ずっと大事にする」

　しばらくそのブレスレットに見惚れていた。

「すごく似合ってるよ。かわいい」

　甘い言葉が何の躊躇もなく私の左手に落とされて、思わず顔を上げたその時、彼の瞳に私が映る。

「…二宮くん？」

　だから私の瞳にも、きっと貴方が映ってて。

「A………好きだよ」

　耳元に添えられた彼の手にドキっとして首をすくめると、

「そのまま。動かないで……」

　二宮くんの吐息が口元にかかった。
　それはまるで魔法みたいに時を止めて。

　何にも邪魔されないこの距離を、二宮くんはキスで埋めた_____。

fin.