そして私はまた、最低な朝を迎える (ページ49)

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※『』謙杜

———2年後.

大阪の土地にもだいぶ慣れてきた頃、
突然「俺の苗字、貰ってくれへん？」とプロポーズされたのはほんの数日前の出来事だった

あまりに唐突すぎて変な声が出たし、その時の私はというと黙々と謙杜のシャツにアイロンを掛けていた

「い、今…？！」

『ホンマはもっとオシャレなとこでピシッと言うつもりやったんやけど…今、無性に言いたくなってん』

「アイロン掛けてるときに…？笑」

『やっぱりアカンかったかな、、』

ちょっと気まずそうに笑って、そっと用意してくれていた指輪を目の前に差出された

「謙杜さ、最初の頃の強気な感じは何処行っちゃったの？笑」

『あれは…！必死やってん…』

「でも普通、職場であんなことしなっ『あああ！もうその話はええって！笑』

いつしか少しずつ関係性が変わり、顔を覆って恥ずかしそうにする謙杜は堪らなく可愛くて、気付けばこうやって私がよくからかうようになっていた

「でも…今だから言えるけどすごくドキドキ、してたよ」

『え？』

「きっと、あの瞬間から謙杜は私の中に侵入してきてたんだろうね？」

『･･･なんやそれ、』

「へ？ちょ、謙杜…？」

律儀にアイロンの電源まで切って私の腕を引っ張ってった謙杜はそのまま勢いよく私をベッドに押し倒した

「え、え、何何どうしたの、、」

『で？返事は？』

「え？ちょ、待っ･･･」

『早く言わんと全部脱がせるで…？』

「〜〜〜っっ」

『顔真っ赤やん、かわいいかよ』

「急にずるい…」

『Aこそ、前からやけど、簡単に俺のスイッチ入れんのやめーや』

今度は私が顔を覆って、あっさり攻守交代…

『どうする？長尾になる？』

「･･･なる、」

『ちゃんとこっち見て』

「･･･っ、、もうばか、」

『からかってばっかりやから仕返しや笑』

なんやかんや最初の頃と変わらずこれからも彼には掻き乱されていく日々なんだと思う
でも、それが今の私には最高に幸せだった——

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『うぉ〜最高の朝やな〜！』

カーテンを開くと沢山の日差しが降り注ぐ。
それは今日の門出を祝福されているような感覚。

『天気ええから役所まで歩いて行こか』

「うん…！」

こうして私達は新しいスタートを切った。
そう、もう最低な朝じゃない。

　最高に幸せな日を迎えたんだ———

【そして私はまた、最低な朝を迎える】

fin.