そして私はまた、最低な朝を迎える (ページ25)

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忘れたいページ25

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「長尾くんどいて…」

これは、所謂床ドンってやつになるのか…
そんな事を考えられる余裕はまだあったようで、押し返そうとしたけど、可愛い顔してやっぱり男の人。簡単には動かない

その間、長尾くんは掴んだ私の手をじっと見て、そのままアイスを拭った指先を舐めた——

「っっ、何してっ…」

『先輩こそ、今何したん？』

「違っ、あれはいつもの癖で…」

『ふーん、いつもの、ね…』

何とも言えない表情をした長尾くんは掴んだままの手をゆっくり引いて私を起こした

『･･････』

「･･･」

『もう、忘れたらええやん』

「えっ？」

『１回全部忘れたら？リセットしたらスッキリすることもあるやろ』

「リセット…」

『･･･もし、先輩が忘れたいってちょっとでも思うんなら、俺手伝ってもええよ。』

「･･･どういうこと…？」

『俺が忘れさせてあげる』

・
・
・

「忘れ、る…？和也のことを…？」

『そう、全部真っ新に。』

「忘れたら、楽になれるの…かな」

『…どうやろ？でも、楽になりたいって時に楽にさせてくれる奴がおるってええんやない？』

「そんなの…最低じゃん…」

『俺はええよ、全然。』

一体どんな気持ちで彼はこんなこと
言ってるんだろうか…
都合の良い相手になるよって、何？
やっぱり他にも何人も女の子がいて、私もそのついでとか？
いやいや、修羅場には巻き込まれたくない…

「彼女だったらそんなの絶対嫌だよ」

『彼女居らんし』

「嘘でしょ？」

『嘘やないよ、メッセージとか履歴とか見る？』

「いやいや、そんなのはいいけどさ…！」

そのまま俯くと、髪が表情を隠す——
どんな顔したら良いか分からなかった私にはちょうど良かった。
でも、そんな隙さえ与えないように私の髪に触れてそのまま耳にかけた長尾くんは真剣な表情でこちらを見つめる

「･･････」

『…どうしたい？』

「どう…したいんだろ…」

『分からへん？』

「うん…」

『そっか、でも俺はこうしたい』

長尾くんの顔がゆっくり近づく
それは私に選択肢を与えているような、試されてる感覚で、逃げたいなら逃げられるでと言われてるよう＿＿

でも何でだろ、
そこまで分かっていたのに拒まなかった私は

『全部、忘れて…？』

長尾くんの言葉に応えるように
気付けばそのまま瞼を閉じて
自然と唇を重ねていた——

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