17話 ページ18
「……いち兄？」
魘されているのか、一期が顔を顰めた。
秋田が、心配そうに一期の顔を見つめた。
「やはり、話すべきか……」
三日月は、いつにも無く真剣な表情で静かに呟いた。
そして、心配からか瞳を潤ませている秋田に呼びかけた。
「のう、秋田」
「三日月さん、教えてください！」
二人の声が重なった。
三日月が、びっくりして目を見開いた。
秋田は、三日月を見上げていた。
空色の瞳からは、涙がこぼれ落ちていた。
「いち兄は、どうすれば起きてくれますか」
秋田は、しゃくり上げながら声を絞り出した。
まるで本当の子供のようだった。
もどかしい。
三日月は、無力な己自身を疎んだ。
それは、三日月が秋田を満足させる答えを知らなかったためであった。
「……すまぬな。俺にはわからぬのだ」
「そんな」
たちまち秋田の顔は絶望に染まり、涙の勢いはますます増していった。
三日月は、秋田から視線を逸らした。そうして自らへの怒りからか顔を顰めた。
何か方法はないのか。
三日月は秋田を横目に見ながら、必死に頭を回転させた。
秋田は、絶望に打ちひしがれてもなお、一期への呼びかけを止めなかった。
いや、一期への呼びかけではない。あれは秋田自身の心の叫びだ。
「いち兄、いち兄！起きてください」
三日月の腕の中で眠る一期を起こそうと、秋田は必死に呼びかけた。いや、それはもはや叫びに近かった。
秋田の涙声が混じったその叫びは、余りにも悲惨な物であった。
三日月は、そんな秋田を見てはいられなかった。
ふと、三日月の頭にある人物が思い浮かんだ。
「……あの、童ならば」
三日月の頭に浮かんだのは、新たにやって来た審神者であった。
「えっと……」
秋田は、誰を示しているのか分からなかったのだろう。困惑しながら首を傾げた。悲痛な叫び声は、止んでいた。
「……すまぬな、審神者のことだ」
「あの、三日月さん」
秋田は涙を手で拭うと、控えめな声で三日月に尋ねた。
しゃくり上げながら泣いていたからか、声は少しだけ掠れていた。
「新しい審神者さんは、どんな人ですか」
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作者名：うたた寝する三毛猫 | 作成日時：2022年3月9日 11時
