離れに住む刀剣男士達 (ページ15)

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14話ページ15

一期は悲しいようで、嬉しいような記憶を思い出したのだった。

「いち兄！」

そう彼を呼ぶ、彼のかけがえのない存在達を。
忘れ去っていた日々が、一期の頭の中で浮かんでは薄れ、やがて消えていった。
その中には、今のように散歩をした日があったのだ。

「私は、何故……」

今まで忘れていた。
絶対に、忘れてはならない存在であるのに。

一期は、涙を流しながら激しく歯を噛み締めた。

「そう自らを責めるでない」

三日月は、笑顔を引っ込めると眉を顰めた。
声色は穏やかだが、どこか冷ややかでもあった。

「しかし弟達は、弟達はっ……」

一期は、三日月を睨みつけた。
迷っているのだろう。行き先のない怒りのぶつけどころを。

「ほとんどがここには、もう居らんのですぞ！」

八つ当たりをしてしまった。
一期の胸に、恥ずかしさが込み上げた。
流れる涙は、留まるところを知らなかった。

三日月は口を開こうとして、つぐんだ。
一期にはおそらく時間が必要なのだろう、と悟ったためだった。

いつしか、地面を濡らしていた一期の涙は、止まっていた。
どうやら、冷静になれたようだ。

「……すみません」

一期は、窺うようにして三日月を見つめた。
八つ当たりしてしまったのを、根にもたれていないのか不安なのだろう。

「良い、気にするな」

三日月の返事に安堵したのか、一期は小さく息を吐いた。
さらに三日月は、間髪を入れずにこう続けた。

「……それに、おぬしは操られていただけだろう」