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12話 ページ13

満月の光が、二つの人影を照らし出している。

「三日月、殿?」

満月が照らす中、金色の瞳が輝いている。
そして、その真正面には三日月を取り込んだ瞳が対峙していた。

「ふむ……返ってきたか」

カラン、と何かを落としたような音が鳴り響いた。
続いてどさり、という音を立てて、人影が崩れ落ちた。

「私は……今まで何を?」

震える声で、一期はすぐ上の三日月にそう尋ねた。
一期の傍には、寄り添うかのように一本の刀が横たわっていた。

瞳に三日月を宿す男性、三日月宗近。
彼は、地に横たわる刀を音も立てずに拾い上げた。

「受け取れ、もう落とさぬようにな」

三日月は、質問に答えないまま、和かに微笑むと、刀を一期の真正面に差し出した。
迷わず一期が刀を受け取り、鞘へと収めた。


「……そう問うのならば、覚えてはおらぬのだな」

三日月は、自身を照らす瞳とは異なる形をした月を見上げた。
そうして、そう小さく溢した。
どうやら、三日月は何やら深く考え込んでいるようだった。
一期の瞳にも、眩い光を放つ満月が映っていた。

「話すにはちと心苦しいが……」

三日月は、どこか縋るようにして月を見ていたが、目線を月から逸らした。
一期は、満月ではなく、瞳の中の三日月へと目を向けた。

「何れ、思い出す時が来てしまうのだろう」

三日月は悲しげな口調で、呟いた。
まだ迷いがあるのだろうか、どこか釈然としない様子で目線を泳がせた。


「だから、一期よ。おぬしに決めてもらいたいのだ」

しかし、それは一瞬だった。
次の瞬間には、迷いを断ち切ったかのような強い口調が一期の耳へと届いた。
三日月は、真っ直ぐ一期に視線を合わせた。
瞳の中では、三日月が光り輝いて見えた。

「俺の話を聞く覚悟が、あるかをな」

一期は、三日月を見つめ返した。
そうして、静かに頷いた。
一期の瞳も、三日月に負けず劣らずの輝きを放っていた。

「あいわかった」

13話→←11話 ※刀剣男士同志で斬り合うシーンがあります。


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作者名:うたた寝する三毛猫 | 作成日時:2022年3月9日 11時

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