キミが残してくれたモノ (ページ10)

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その日の夕食はママの為に作ったカレーを食べたいと言い、Aちゃんはそれを口にしてくれた。

あまり食欲はないのか半分以上残していたけれど、食べてくれただけとりあえず安心した。

Aちゃんが初めて作ってくれたカレーはとっても美味しくて、涙が出そうになった。

実樹ちゃんが美味しそうに食べる姿を見せてあげたかったし、Aちゃんも本当はママに食べてもらいたかったよね……。

カレーの食器を洗っていると、また視界が滲んできた。

俺ってば、どんだけ泣いてんだよ……。

「はぁ……。これからどうなってくんだろうなぁ。」

職場には事情を説明し、今週いっぱい休みをもらった。

Aちゃんも来週からは学校へ行かなければならない。

無事に学校へ行けるのかな。

俺が仕事から帰宅するまでの時間、ひとりで留守番は出来るかな。

全てが不安で、しかたない、

俺が実樹ちゃんと結婚して3人で暮らし始めて約2年半。

まだたったそれしかAちゃんと過ごしたことのない俺が、この先もパパと名乗ってAちゃんと暮らしてもいいのだろうか……

Aちゃんはどう思ってるんだろう。

もしかしたら本当のパパと一緒に暮らしたいと思っている可能性だってある。

その人が何処にいるか知らない俺は、そんな残酷なことを聞くことはできないけれど。

2年間しか一緒に過ごせてない血の繋がりもないこんな俺が、Aちゃんを守って行くことができるのかな……。

実樹ちゃんと結婚した時、俺は20歳だった。

製菓専門学校を卒業してパティシエとして新たな一歩を歩み始めたばかりの頃で、両親に結婚の話をした時は大反対された。

最初の理由は俺がまだ20歳の社会人になったばかりだったのもあって、相手を養う力がないことを心配されてのことだった。

彼女が再々婚で幼い子どもがいることを知ると、親不孝者だと罵倒され殴られた。

婚姻届を出すと伝えた日に勘当されてしまった為、頼れる身内はいない。

実樹ちゃんも幼い頃に親からネグレストを受けて施設で育っていた為、頼れる身内はいなかった。