キミが残してくれたモノ (ページ8)

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8…T ページ8

家に掛かってきた電話を切った後、暫く俺は放心状態から抜け出せなかった。

「パパ……？」

俺の顔を見つめるAちゃんに事実を伝えられず、屈んで小さな身体をめいっぱい抱きしめることしかできなかった。

「Aちゃん。今日はパパがひとりで病院に行ってくるから、その間みっくんちでお留守番出来る？」

「できるよ！」

「お利口さんだね、Aちゃんは。」

「お誕生日するから、早くママのこと連れて帰ってきてね！」

「うん……。みっくんたちと待っててね。大好きだよ、Aちゃん。」

Aちゃんに初めてついた嘘。

まだ3年生のAちゃんに、ママが死んだなんて言える訳ないよ……。

それに俺だって頭が真っ白で現実だということが信じられなくて、これでもかってくらいひとりになって泣いた。

・

「……どうしよう、コレ。」

色んなことが片付いて、北山さんのお宅にいるAちゃんを迎えに行く日の朝。

起きてリビングに入ると真っ先に俺の目に飛び込んできたのは、大きなバルーンの飾り付けだった。

実樹ちゃんの誕生日をサプライズでお祝いしようとしてた為、部屋は可愛く飾り付けしたまま。

Aちゃんを迎えに行ってママが亡くなったことを話さなければいけないのに、この飾り付けを目にしたら余計Aちゃんを悲しませてしまうと思った俺は、そっと外して寝室のクローゼットへ投げ込んだ。

Aちゃんが一生懸命作ったカレーとサラダは今日の夕食に食べてくれるかな……。

ママの為に作ったモノだから、もしかしたらママなしでは食べたくないと言うかもしれない。

俺はAちゃんに会うのがめちゃくちゃ怖かった。