キミが残してくれたモノ (ページ23)

今日:3 hit、昨日:3 hit、合計:82,534 hit

23…T ページ23

以前Aちゃんは、ママと一緒に入るお風呂が大好きだと言っていたことがある。

無くなってしまった大好きも多いかもしれないけれど、新しい大好きも増やしてあげたいと心から思う。

「パパぁ……A、もう眠い。」

「ちゃんと歯磨きしたらね？」

「磨けない……」

「ん、お口あけてごらん。」

おねむになると甘えん坊でワガママさんになるAちゃんをとことん甘やかせてあげながら寝る支度を済ませて、抱っこでベッドまで連れて行く。

「よいしょっと。おやすみ、Aちゃん。」

「Aのこと、ぎゅうして……」

「ぎゅーっ。大好きだよ、Aちゃん。安心して寝ていいからね。」

「おやすみ……なさい……」

Aちゃんから可愛らしい寝息が聞こえてくるまで隣に寝転がって背中をトントンしてあげる。

そこから残りの家事を済ませて、やっと俺の任務は終了する。

「はぁー。今日も一日頑張ったな、俺。」

実樹ちゃんがAちゃんとふたりで暮らしている時は、毎日こんな忙しい日々を過ごしていたのかな。

実樹ちゃんが亡くなってから暫くはAちゃんの口数も少なく、涙することも多かったけれど、少しずつまた笑顔が増えてきて自分からも進んでお喋りしてくるようになった。

だけどママの話は一切しないし、俺からも出すことはしない。

Aちゃんの心の傷は何年経てば癒えるのかな。

もしかしたら、一生癒えることはないのかもしれない……。

もし実樹ちゃんが生きていたら、あの日帰宅した実樹ちゃんはどんな反応を見せてくれていただろう。

きっと、瞳をうるうるさせて感激してくれていたかな。

そんなママを見たAちゃんがにこにこ嬉しそうに笑ってる顔まで想像できて、鼻の奥がツンとしてきたから慌てて考えるのを放棄した。

明日は土曜日、やっと休みだ。