キミが残してくれたモノ (ページ1)

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「ママね、好きな人がいてその人と結婚することになったの。」

久しぶりにママと一緒に夕食を食べている時、ママが嬉しそうな顔をしながらそう言った。

厳密に言うと、再々婚になるんだけど。

ママが最初にパパと別れたのは、私が3歳の時だと聞いたことがある。

そしてママが再び結婚したのは、別れて数週間後。

パパと別れたママは、あっという間に再婚をした。

と言うより、その人と再婚する為に別れたと言った方が正しいのかもしれない。

だってママの浮気が原因でパパと離婚することになったってだいぶ後から聞いたから。

ママは好きな人と結婚したのに、暫くするとパパとは違う男の人を好きになる。

そして帰って来ない日が徐々に増えていく。

その再婚した人もママに呆れてしまったのか、あっという間に出て行って、また私はママと2人だけの生活に戻った。

そして私が6歳の時だった。

「ママね、好きな人がいてその人と結婚することになったの。」

ママは、嬉しそうな顔をしながら私に言った。

まだ6歳だった私は再婚だとか不倫だ浮気だなんてわかっていなかった。

だからママは私にとって自慢のママだった。

ママは私を17歳の時に産んだから、若くて凄く綺麗で、洋服も他のママと違っていつもお洒落で素敵なモノばかりを着ていた。

一緒にお買い物へ出掛ければ、ママはよく知らない男の人から声を掛けられていた。

今思うとそれがナンパだったんだとはっきりわかるけれど、当時はよくわからなかった。

私はママに対して、いつかもう一度幸せになって欲しいって思っていたから、ママが再々婚の話をしだした時は素直に嬉しかったんだ。

そう、あなたでなければ……

・

「A。今日は門限になる前に早めに帰ってきて？」

「えー、どうしてー？」

「この間、結婚したい人がいるって話したでしょう？今日はその人と3人で会うからよ。」

「んふふっ。いいよ、ママ。あたし、はやくかえってくるね！」

その夜連れて行かれたのは高そうな中華料理屋さんで、ママの好きな人は少し遅れてやって来た。