キミが残してくれたモノ (ページ44)

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「あとね、お弁当も凄く美味しかった！卵焼きも甘くて美味しかったよ！」

「どうしてAちゃんはこんな優しんだろうねー。」

「えー、でもほんとだよぉ？」

今日は自分の分も弁当箱に詰めて職場に持って行ったから同じものを昼飯に食べたけど、焦げた卵焼きは少し苦かった。

こんな小さなコに気を遣わせるなんて、情けないよなぁ。

Aちゃんの好きな卵焼きとハンバーグだけでも上手くなりたいと思った。

風呂から出て身体を拭いていると家の電話が鳴りだした。

慌てて腰にバスタオルだけ巻いて、急いでリビングへ行って受話器を取った。

「はーい、玉森です。」

「こんばんは。Aちゃんの担任の佐野です。今少しだけお時間大丈夫ですか？」

「あ、こんばんは。はい、なんでしょうか。」

まさかの予想もしてない担任の佐野先生からの電話で、嫌な予感に襲われた。

「今日の昼食の時のお話はAちゃんから聞いてますか？」

「えっ、いえ、楽しかった話だけで。」

「そうでしたか。実は今日、Aちゃんのお弁当を見て揶揄ったコがいまして……。私も注意をしてAちゃんへ謝罪させたのですが、お家での様子はどうですか？」

「そんなことが……。いつも通りで全く気がつきませんでした。」

「そうでしたか。そのコに向かって、パパの作る料理は美味しいんだ！って仰ってました。」

気付きもしなかった……

俺に向ける向日葵みたいな笑顔の裏に、そんな悲しいことがあったなんて。

俺のせいで辛い思いをさせたのに、遠足では俺を庇って、家では俺を悲しませないように気遣って……

Aちゃんを悲しませてるのは全て俺なのに。

「パパー。いつまでぼーっとしてるの？風邪引いちゃうよ？」

｢……あ、ありがとう。｣

「早く着て下さーい！」

バスタオル一枚の俺に、洗面所に置きっぱなしの下着とパジャマを持ってきてくれたAちゃんは、今も俺に優しい笑顔を向けている。

そんなAちゃんを見ていたら、今電話で知ってしまったことを聞くのはやめた。

涙を堪えて笑顔を張り付け、Aちゃんと向かい合う。

「今日は早起きしたからAちゃんと一緒に寝ちゃおうかなー。」

「え、本当？パパと一緒に寝るの久しぶりだから、嬉しいっ。」

「ンフフ。ミミちゃんと3人で寝よ寝よーっ。」

そのかわり一緒に寝るふりをして、ぎゅーっと抱きしめてからAちゃんが眠るまで、隣で優しく頭を撫で続けた。