キミが残してくれたモノ (ページ37)

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寒い冬も終わりを迎え、街中が綺麗な桜色に染まる季節となり、Aちゃんは小学4年生になった。

それと同時に、玉森家は新しい生活を送り始めている。

今年度からAちゃんは学童へ通えるようになって、今まで俺は17時半に退勤していたけれど、18時まで働けるようになった。

そこから学童へ迎えに行って、帰宅して夕食の支度をする。

まだ簡単なモノしか作れないのに失敗することもあるし、スーパーのお惣菜に頼ることだってあるけれど、どうにかふたりで生活している。

今まで散々北山さん宅に甘えてしまっていた分、睡眠時間を削って夕飯の下拵えをしたりとなかなかハードだけれど、Aちゃんがお風呂洗いを担当してくれたりとても協力的で、随分と助けられている。

そんな生活を始めて半月ほど経った頃だった。

「パパ……。」

キッチンで洗い物をしていると、いつも明るいAちゃんが不安を纏った声で俺を呼んだ。

「どうしたの？」

「あのね、コレ……。」

「んー、なんだぁ？」

濡れた手を拭いて渡されたプリントに目を通すと、家庭訪問のお知らせと書いてあった。

うわー、懐かしい。

俺らの時代もあったなぁ。

学年が変わったこの時期は、家庭訪問があるのか。

ふと目線を下げてAちゃんを見ると、捨てられた仔犬のような瞳で俺を見つめていた。

「パパはお仕事だもんね……。」

「……大丈夫だよん。ちゃんと間に合うように帰ってくるからね。」

「ほんと？」

「うん、本当。大丈夫だよー。」

あぁ……

それでAちゃんは不安だったんだ。

学校事なら上司にお願いすれば早退させてもらえるはずだけど、家庭訪問ってどうすればいいんだろう。

Aちゃんの学校での様子が知れるのは嬉しいようで、怖さもある。

「その日は学童お休みしようね。パパがおうちで待ってるから。」

「うんっ！」

Aちゃんの頭を撫でてから、途中になっていた食器洗いを再開した。