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仕事をこなしているうちに、他のことが考えられなくなってきたのか、すっかり仕事モードに入り込んでしまうA。
時間的に、「学院祭」では一般客の客足も落ち着いてきた頃だろう。
この時点で、「学院祭」に間に合うのは不可能だと思っていた。
楽しみにしていた気持ちを押し殺していると、リズリンの所長が事務所に顔を出した。
「おや？衣更さん、今日は休みじゃなかったかな？」
『所長っ、お疲れ様です』
「あぁ、態々立たなくていいよ」
リズリンの所長は壮年の優しげな男性で、アイドルを除いた事務所内で一番若いAを何かと気に掛けてくれる。
良く言えば期待されており、悪く言えば甘やかされているとも言えるだろう。
「休みの日にまで仕事かい？
夢ノ咲学院で講師もして、二足のわらじで大変だろうに」
『いえ、私なんかまだまだ未熟者ですし、与えられた仕事はちゃんとこなしたいので』
仕事に向き直るAを見て、所長は小さく溜息をつく。
「……遊びよりも仕事を優先するのは良いことだが、「正しい」かと言われればまた違う。
何か、用事があったんじゃないのかね？」
『いえ……』
「若者に気を遣わせてしまうとは情けない話だ」
そう言うと所長は、机の上の資料を手に取った。
「残りの作業はこちらで済ませておくから、君はもう帰りなさい。
この分だと、あとは確認と提出だけだろう？」
『い、いえ！最後までしますよっ』
「構わないよ。そんなお洒落してるのに仕事だけして帰るなんて勿体ないだろう？
そういえば今日は、夢ノ咲学院は「学院祭」だったかな？
この時間に退社すればまだ間に合うだろう。息抜きも、立派な仕事だよ」
そう言われ、Aは半ば無理やりだったが、所長のご厚意に甘えることにした。
『ありがとうございますっ。
お疲れ様でした！』
Aは上着と鞄を手に持ち、早足で夢ノ咲学院へと向かった。
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作者名：もぶピ
| 作成日時：2022年10月2日 23時
