１０２ 本編 ページ2
「俺はこいつを『紅月』に引き入れるつもりはない」
蓮見がそう言うと、衣更姉弟は揃って間の抜けた声が出る。
『どういうこと？英智くんがまた変なこと言いだしたわけ？
眼鏡を割られたくなかったら薄情しな！』
「なんか今日の姉貴、変だぞ……？」
「言葉の通りだ。確かに、俺は衣更の能力を見込んで『紅月』に引き入れようとした。
だが、『Trickstar』には因縁がある。ゆえに、貴様らには万全な状態でいてもらわなくてはならん。
勝ち逃げは許さん。
いずれ全員揃って最高のパフォーマンスを発揮する『Trickstar』を、正面から我ら『紅月』が打ち倒す。
その前に、つまらぬ理由で消えてもらっては困る。それだけのことだ」
蓮見の言葉に、Aは身構えていた握りこぶしをそっと解く。
『ハッ、君も男の子だね。そんなことして、英智くんに怒られても知らないよ？』
「そういう貴方こそ、そんな堂々と『Trickstar』を庇うようなことをしてタダで済むと思っているのか？」
『私は姉として弟の将来を守っただけよ。
家族のことを他人にどうこう言われる筋合いはないわ』
「姉ちゃん……」
Aはそう言うと、真緒の方に振り返り、『Trickstar』の衣装を渡した。
「これ……」
『早く着替えておいで。スバルくんとあんずちゃん、ずっと待ってるんだから』
「ありがとう、姉ちゃんっ」
そう言うと、真緒は吹っ切れたような顔で衣装を持って走って行った。
『…………』
「……Aさん」
『なによ』
「言動が可笑しいと思ってはいたが……さては、寝てないな」
『なんでわかったの？』
「昔から貴方は寝不足がすぎると言動が可笑しくなる癖があったからな。
このドリフェスが終わったら、十分に休息をとれ。まったく、度し難い」
『言われなくてもそうする』
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作者名：もぶピ
| 作成日時：2022年9月14日 1時
