episode 11 ページ12
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別れよう。
そのたった一言で、私は頭に石を叩きつけられたような痛みを覚えた。
(別れるって、私と?)
理解ができなかった。
いや、理解できていたけど、したくなかった。嘘だと思いたかった。
愛は案外簡単に忘れてしまう。
忘れていた愛は、案外簡単に思い出す。
『う……うそ、い…や!!』
一年間も放っておいた彼が離れていくのが、どうしても許せなかった。
自分から離れていくのが悔しいとかじゃなく、単純に、好きな人の近くにいたかった。
もう一度「好きだよ」って、その口で言ってほしかった。
そして、ごめんなさいって言いたかった。
けど、遅かったんだ。
『……あはは、』
涙なんて出てこなかった。自業自得だからね。
私は、自分に溺れていた。
愛する人も、愛してくれる人もいたくせに、愛に溺れることがてきなかった。
女優も、モデルもやめよう。
新しい仕事を探して、また彼のような人を探そう。
そう思っていた時。
「先輩、馬鹿な考えはやめてくださいよ。」
『……?』
私に声をかけてくれたのは、泉くんだった。
いつも通りの無表情。
いつも通りの熱のこもっていない声。
だけど、それが私をひどく安心させた。
『……
「先輩には人気も実力も美しさもあるのに、なんでそんな考えに至るんですか。」
泉くんの声が、頭に響いていく。
「人生一度きりなんですから、たった一人の男のために選択を間違える必要なんて無いですよ。」
『……うん。』
私の頭の中が、泉くんの声で埋まっていく。
「俺はちゃんと、約束を覚えていますよ。」
ああ、思い出した。
私が忘れていた、約束。
私が忘れていた、欲求。
彼が覚えていた、気持ち。
『瀬名くん、私のこと好き?』
「先輩、好きですけど?」
別れたはずの彼から「もう一度付き合ってほしい」と連絡が来たのは、それから2ヶ月後の話。
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アザレアを持ったねこ(プロフ) - 面白いですね!私もKnights好きです!箱推しじゃないんですけど…でもみんな好きです!良ければお友達に…|´-`)チラッ (2018年1月20日 4時) (レス) id: b01fa5b414 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:御苑 | 作成日時:2018年1月18日 20時