新入部員数の格差 ページ9
「ころちゃーん!!!」
後ろからやけに元気な声が聞こえて振り向くと、莉犬くんがまっすぐ走ってくるところだった。いかにも『猪突猛進』みたいな感じでころんの背中にダイブして、リュックをぼふん! と叩く。
「……なに」
「テンション低いなあ!! 今日一日入部の日じゃん!」
キラッキラした目でそう言う莉犬くん。なぜそこまで青春を謳歌できるのか理解できない。
「……それで?」
「え?! テンション上がんない?!!」
……駄目だ。人種が違う。
珍しくころんと一緒に呆れていると、「ころちゃーん!」という聴き慣れた大声が背後から聞こえた。
まさか、と思って振り向くと、紫髪の人がダッシュで向かってくるのが見えた。あほ毛をぶんぶん揺らしながら、見えない尻尾を振って、ご主人様に駆け寄る犬のように走ってくる。ころんの背中にたどり着くと、ちょっと潰れたそのリュックをぼふん! と叩いた。
「テンション低いね! 今日は一日入部の日だよ!」
声は変わってないのに、ははっ!と某ねずみキャラクターの笑い声が聞こえてくる気がする。
「……それで?」
「え?! テンション上がんない?!!」
うぇーい! とふたりがハイタッチをして、えへえへと笑っている。愉快そうな彼らを置いて歩き出すと、ころんがぴょこぴょことついてきた。
「そういえばさっきやってた新入部員の計算さあ、結果何人になったの?」
「いろいろ考えたけど、十人ちょっとかな」
「うーん少ない」
やっぱ陸上部って見栄えしないもんなあ、ところんが唸る後ろから、さっき私たちに置いていかれたふたりが走ってくる。今度は大人しくころんの背後について、なんの話してるの? と彼の肩から顔を出した。
「新入部員の話」
「演劇部って何人くらいいるんだっけ?」
「えっとねー……五十人くらい?」
「ゔっ」
「ぐはっ」
莉犬くんの無邪気な回答に、ころんとふたりでショックを受ける。ちなみに陸上部は二十六人だ。正直きつい。
うちの高校は運動部より文化部の方が主流で、特に演劇部と吹奏楽部は毎年部員数一位二位を争っている。一方陸上部はと言うと、運動部の中でもワーストスリーに毎年ランクインしている。全く嬉しくない。
「まあでもなーくんは同好会だし……」
「やめてちょっと傷つく!」
自分で部活を立ち上げたなーくんに対しころんが最低な傷の癒し方をしたところで、学校の校門についた。
続く お気に入り登録で更新チェックしよう!
最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している
←理想的な演説です
24人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:紬 | 作成日時:2020年8月3日 13時