それぞれの岐路 ページ6
「A 入るから！」
桜木ちゃんがやって来た
いつものおっとり真綿で絞めるような圧力とは違い、どこか焦っているかのようだ
外の様子を確認して、するりと病室に入り込んだ
「どうしたの？なんか……」
「そんなことより！あの冷徹刑事は？」
「さっき来客…………」
ガチャ
「え？」
内鍵を閉めて振り向く桜木ちゃんに、ぞわりと背筋が凍りついた
普段から何考えてるか解りにくい子だけど、今日はいつもに増して様子がおかしい
「もう、これでしばらく、ふたりだけだよォ？」
「う、うん…………。そうだね…………」
ゆっくり近づく桜木ちゃんに思わず体が後退る
「ねえ？……………Aと私はぁ、友達、だよねえ」
「私はそうだと思ってるけど」
また、一歩距離が近づいた
自然と後ろに体が退がる
「じゃあ、前にお願いしたこと、ちゃあんと、してくれた？」
「前？」
「事件について聞き出せって！この前頼んだばっかだろォ？！」
とうとう後ろが壁に当たった
「それは無理だって言ったでしょ？」
発した声が震えている
それほど、今日の桜木ちゃんは恐かった
「藤井先生のマンションの件は、住人全員が犯人の可能性があるから、住人と関係してるひとには、特に、教え、られない」
神谷さんにも水城さんにも、何となく聞くのは憚られて
藤代さんに確認した
当たり前のように断られたけど
「そんなことって、なくない…………市民がこんなに不安なんだよ…………」
ブツブツ小声で呟きながら、桜木ちゃんが親指の爪をきつく噛む
ガリッと鋭い音が響いて、つぅ…………と血が流れ落ちた
「ありえない…………ありえない…………」
「さく……」
「ありえないでしょ？ねえ！！？」
「ぁッぐ……！！」
ガツンと頭に衝撃が走る
胸ぐらを桜木ちゃんに掴まれてるのが辛うじて理解できたこと
「じゃあ、ブータン料理屋のタナカマサオは？袴田吉彦のことは？久住を突き落とした犯人は？」
「それ、なに…………？知ら、な……」
「刑事はどこまで握ってんの！？」
「知ら……」
ガン
「Aなら知ってるでしょお？」
ガン
「だって、聞きだすの、上手だもんねえ」
ガン
「知ってること！全部！言えよ！ねぇ！」
「っは…………」
生暖かいものが首筋を伝っておりていった
頭がくらくら回ってる
感覚が麻痺してるのか、もう痛いかどうかすらわからない
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はむ(プロフ) - 涼嶺さん» うれしいコメントありがとうございます！ラストスパート頑張りますね！お話も終盤で暗めですが、後もう少し付き合ってもらえるとうれしいです(^^) (2019年10月20日 1時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
涼嶺(プロフ) - とても楽しく読ませて頂いてます！これからも頑張ってください！ (2019年10月20日 0時) (レス) id: 9bbe7fe112 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます！ (2019年10月11日 7時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 後戻りができないの話、誤字がありました。「それはだけは」ではなく、「それだけは」です。 (2019年10月4日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！助かります！ (2019年10月3日 17時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年9月16日 0時
