寄りかかる ページ3
「あれ？神谷さん、ひとりですか？」
「水城さんは来ませんでしたか」
神谷さんが戻ってきた
眉間の皺は深い上に、目に見えて元気がない
これからどんな風に接していけばいいのか、やたらソワソワしていたけれど、
そんな悩みは吹っ飛んだ
「なにか、喧嘩でもしたんですか」
「別に」
したんだな
戸棚から茶葉を取り出して、お湯を沸かして緑茶を入れる
あの温厚な水城さんが怒るくらいだ
もしかしたら、かなり拗れたのかもしれない
「立て続けにいろいろあったから、気持ちが休まらないですね」
ことりと湯飲みをテーブルに置く
今回のことがあってから、以前の注射針の時も同じ毒物が仕込まれていたと知らされた
神谷さんが私に心配させないように、口止めしていてくれてたことも
「ここに居るの……ホントは危ないんじゃないですか」
ここの医療関係者の中に、犯人がいる可能性があるらしい
犯人が神谷さんをまだ狙っているなら、ここを離れた方がいいのは明らかで
「転院とか……」
「止めてください」
ピシャリと言葉が飛んできた
「あなたが、それを言わないでください」
悲痛な声にぎゅっと胸が詰まる
弱々しい神谷さんは、そのままにしておくと消えそうで
「……………。ずいぶん積極的ですね」
「そうやってからかうの、止めてって言いました……」
思わず抱きついた体に ゆっくり腕が回された
「俺が居なくても平気なんですか」
神谷さんの無事を考えるなら"平気だ"と答えるのが正解なんだろうけど
【俺にはあなたが必要です。ひとりでは生きていく自信がない】
あの言葉を思い出すと、平気と言ってはいけない気がした
ずっと感じていた違和感
懲戒免職、手塚さんとの会話、命があることをあまり良く思っていないとも取れる発言
神谷さんは私が思う以上に心に重いなにかを抱えている
こんな状態の彼をひとりになんてしたくなくて
「ずっと、離れたくないです」
「あ？」
驚いたような顔をされたけど、今はそんなの関係ない
どこにも行ってしまわないように、回した腕に力を込めた
「平気なんかじゃないです」
神谷さんはうれしくなかったかもしれないけれど
私は神谷さんが生きてて、
こうしていっしょに過ごせて
すごく暖かい気持ちになれたから
「あなたが素直だと……気色が悪いですね」
そんな風に言いながら、私を撫でる手は優しかった
「その言い方、最低です」
彼の胸元に頬を預けながら、優しい音に目を閉じた
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はむ(プロフ) - 涼嶺さん» うれしいコメントありがとうございます！ラストスパート頑張りますね！お話も終盤で暗めですが、後もう少し付き合ってもらえるとうれしいです(^^) (2019年10月20日 1時) (
レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
涼嶺(プロフ) - とても楽しく読ませて頂いてます！これからも頑張ってください！ (2019年10月20日 0時) (レス) id: 9bbe7fe112 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ありがとうございます！ (2019年10月11日 7時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 後戻りができないの話、誤字がありました。「それはだけは」ではなく、「それだけは」です。 (2019年10月4日 23時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)
はむ(プロフ) - 明里香さん» ご指摘ありがとうございます！助かります！ (2019年10月3日 17時) (レス) id: 62ba10663f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：はむ | 作成日時：2019年9月16日 0時
