ひみつな恋 ⑥ (ページ49)

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「紫さん？」

「あっ……Aちゃん。」

「え、どうしたんですか？どこか痛いですか？」

なかなか戻って来ない紫さんが心配になってトイレまで様子を見に行くと、パウダースペースで涙ぐんでいる紫さんを目撃してしまった。

「やだ、ごめんね。」

私に気づいた紫さんは、目尻の涙を慌ててハンカチで拭った。

「大丈夫ですか？もし体調が悪いのなら、一緒に帰りましょう？」

「ありがとう、Aちゃん。心配かけてごめんね。」

「それは全然大丈夫ですから。」

「でも、そうじゃないの……。」

「え？」

紫さんは切なそうに微笑んだ。

「なんとなく感じてたんだけどね。もしかしてAちゃんて私の元カレ、太輔くんだと思ってる？」

「えっ……違うんですか？」

「太輔くんとは本当にずっと幼馴染みなの。」

「ごめんなさいっ。私、ずっと勘違いしてました。」

「ふふっ、全然いいのよ。よく間違われるから。」

じゃあ、紫さんの元カレって・・・。

私はとんでもない勘違いをしていたのかもしれないと、この時ハッキリ気付いた。

「Aちゃんとみっくんの姿を見たら、私……動揺しちゃって。」

やっぱり紫さんの忘れられない元カレとは、宏くんのことだった。

「無神経にごめんなさい。紫さんの相手って、宏くん……だったんですね……。」

「あっ、でも気にしないでね？私、ちゃんと吹っ切れてるから！」

私には吹っ切れてるようには見えないよ。

だって今紫さんは泣いていたし、以前一緒に食事をした時もまだ好きだって……一生想い続けると思うって、言ってたもん。

この複雑な気持ちをどうしていいかわからない。

紫さんには好きな人と結ばれて欲しいと思っていた。

あわよくば忘れられない元カレと上手くいって欲しいと。

それなのに……その相手が宏くんだったなんて……。

もう紫さんの恋を応援してあげられないことに胸が痛んで、私の瞳からも涙が落ちた。

紫さんが好き。

だけど私……

宏くんのことは取られたくないよ。