253……Ki ページ13
「今日は色々助かったわ。あんがとね。」
「念の為に聞くけど、あんたの彼女はあのコだけよね？」
「……はい？」
「なんだかしょっちゅう女のコとパパラッチされてるじゃないの。」
「あぁ、そういうこと？あれは単なる友だち。他に彼女なんかいないから安心して下さいよ。」
「女のコには優しくしないとダメよ。威張ってたら嫌われるわよ。」
「わーってるよ。威張ってなんかいないって。」
母ちゃんて昔っから、女のコと金の話になると煩いんだよなぁ。
そんなことわかってるっつーの。
「じゃあ、またね。」
「はいよ、じゃーな。」
母ちゃんを見送った後、すぐに寝室へ入ってベッドを覗いた。
朝と違って呼吸が穏やかになっていて、ほっとした。
そっと首元に触れると、朝よりは熱が下がってる気がする。
ただ結構汗かいてるっぽいけど、どうしようかな。
拭く？着替え？
とりあえずAちゃんの服が入ってるクローゼットのチェストを開けて、一番上にあるパジャマと下着を取り出して枕元に置いた。
起こしても大丈夫かな……
「Aちゃん？」
少し熱をもった紅い頬を撫でていると、Aちゃんがその手に触れて、ゆっくり目を開けた。
「Aちゃん、ただいま。大丈夫？」
「宏くん……あいたかった」
「うん。遅くなってごめんね。」
Aちゃんの頭を撫でると、擽ったそうに微笑んだ。
「なんか食べれる？食べたいモノある？あーつうか、うちの親来たっしょ。びっくりさせてごめんね。」
「ううん。お粥作ってくれたりおでこの替えてくれたり、嬉しかった。」
俺の反対の手を握りながらAちゃんは続けた。
「あの、ね……私、母親の記憶ってほとんどないの。でも今日宏くんのママに優しくされてね、幼稚園の頃に熱出した時、ママが卵粥を食べさせてくれたことを思い出してね、すごーく嬉しかったの。」
それは、Aちゃんの口から初めて語られたお母さんの話だった。
両親が亡くなってることは聞いて知っているけれど、お母さんやお父さんのことを話すAちゃんを一度も目にしたことがなかった。
お母さんのことをママと呼んでるAちゃんがいつもよりとても幼く見えて、堪らずその身体を抱きしめた。
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作者名：にかみつば
| 作成日時：2020年12月9日 18時
