L.O.V.E.-Ⅱ- (ページ33)

今日:1 hit、昨日:3 hit、合計:25,275 hit

＊ページ33

･

仕事が終わったのはもう26日になった頃で
会社の入り口のイルミネーションもどきも
消灯していた。

冷たい風が吹いて、思わず首をすくめた。

クリスマス

いつから私には無縁のイベントに
なってしまったのだろう…

本音を言うと、
クリスマスにこんなに仕事している
自分に切なくもなる。

向かいから人影が見えて、
こちらに歩いてくるから、
少し避けるようにして
下を向いてすれ違おうとした瞬間、
腕を掴まれた。

顔を上げるとスーツではなく
少しラフな格好をした玉森くんだった。

「え？なんで？」

「メリークリスマス、A先輩」

そう言うと、玉森くんは私に紙袋を差し出した。
それは並ばなくちゃ買えない
ケーキ屋さんの紙袋だった。

「どうせクリスマスケーキも食べてないんでしょ？」

「ここ、クリスマスは予約しなきゃ
買えないんじゃ…」

「俺、準備いいから予約したんですよ、
偉いでしょ？」

　
「どうして…」

「A先輩に食べさせたくて」

困惑して何も言えない私に向かって、
玉森くんはふわっと笑った。

「はい」

玉森くんから紙袋を受け取ろうと手を伸ばすと、
ふいにその手を繋がれた。

「さぁ帰って、早速食べよー」

玉森くんは私を手を引っ張って歩き出す。

「か、帰るってどこに？」

「俺んち」

状況が理解出来ずに戸惑っている私を無視して
玉森くんはどんどん歩いていく。

「A先輩にもサンタさん来てよかったね」

「サンタさん？」

「ほら、よく言うじゃないですか、
恋人がサンタクロース」

玉森くんはあの有名な曲のワンフレーズを歌った。

「いつから玉森くんが私の…」

「今この瞬間ですよ、
ほんと、A先輩、
素直じゃない上に鈍感。最悪」

「…最悪って！！」

玉森くんが急に振り返って、
触れるだけのキスをした。

「素直じゃないところも含めて好きですよ」

玉森くんはまた私の手を引いて歌いながら歩き出す。

「恋人がサンタクロース
背の高いサンタクロース」

どうやら私のことろにも
遅れてサンタさんがやってきたようだ。

-Fin-