アイスクリーム -Ki- ページ1
･
「うーん！！おいしー！！」
「ねぇーA…髪乾かしてー」
宏光がドライヤーを持ってリビングへやってきた。
「えー…今日は自分でやってよー
私は今日、このアイスを食べてることを
楽しみに1日頑張ったんだから」
「お前、俺よりアイスを取るのかよ」
「今日だけ！今日だけだから！
明日は乾かしてあげるから、ね？」
「…ケチ」
私に聞こえるか聞こえないかの小さな声で
少し口を尖らせて洗面所に戻っていく。
しばらくドライヤーの音がしていたが、
パタンとドアが閉まる音がして宏光が
リビングに戻っていた。
1人悶絶しながらアイスを堪能していると、
後ろからずっしりと重みを感じた。
「まだ食ってんのかよー
早く食えー早く食えー…」
宏光が首にまとわりつくように
後ろから抱きついた。
「そんな呪いみたいに
ブツブツ唱えないでよ…」
「俺よりアイス取ったから」
「あれ？寂しくなっちゃった？」
「うっせ。ってかそれ、
そんなにうまいの？」
「美味しいよ？甘いけど…
一口食べる？」
「…うん」
スプーンにアイスを一口分すくって、
振り向いて宏光の口元に持っていく。
お口を開けて待っている宏光が可愛くて、
ついにやけてしまう。
「…あまっ」
「甘いって言ったじゃん！」
そう言って残りの続きを食べようと
アイスを口に入れた瞬間、
後ろにいた宏光が少し身を乗り出して、
私の口を塞ぐ。
私の口の中で広がっていたはずの
濃厚チョコアイスの味は
一瞬にして消えてしまう。
宏光はキスをしたまま
私の手からアイスの容器を奪う。
なんでだろう…
あんなに夢中だったアイスが
一瞬にしてどうでもよくなってしまう。
長いキスが終わると宏光は自分の唇を舌で舐めた。
「あまっ…
なぁ…まだアイス食べる？」
私の唇を指でなぞる。
「もういらない」
私は宏光の首に腕を回す。
宏光はふっと笑った。
-Fin-
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作者名：あおい | 作成日時：2020年11月5日 21時
