貴方と、僕と、僕たちと。３

ファンレター＿Ｓ ページ24

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「ただいまー」

「おかえりー、翔くん」

「ん、ふふ」








出迎えてくれる貴方にキスをして、

いい匂いのするリビングに。








「今日はねぇ、ビーフシチュー作ってみた。
寒くなってきたから」

「ぅお、うまそう」







作れたことが嬉しかったのかな。

にこにこ笑いながら支度をしてくれる。

こういう日は大抵調子が良い日。







「なぁ潤、ファンレターの返事書いたんだって？」

「ぁ、そうそう、書いたよ」

「なんで言ってくんなかったんだよ、」

「え、言ってないっけ？」

「言ってねぇよ。
にの伝いで聞いてショックだったんですけど」

「なんでショックなの、ふふ。
隠してたわけじゃないよ？」

「んー、」

「もう、ふふ。散歩から帰ってきて返事書いて、
次の日散歩に出た時にその手紙を投函したの。
だから、翔くんがいない時にしてたことだからさ？」








しっかりした説明をもらって小学生か俺は。








「ネット上に喜びの声がね？めっちゃあがってたよ」

「ゎ、そうなの？嬉しいなぁ」

「天下の松本潤から返事なんてもんが来たら
俺は倒れちゃうな、家宝だよ家宝、」

「………なに、いじってる？
本人、貴方の目の前にいるんですけど、ふふ」

「いじってない、いじってない、んふ。食べてい？」








ビーフシチュー。

最高にうまい。








抗がん剤のせいで一時は失われた味覚。







料理好きの貴方からしたら相当ショックだったらしく

しょっぱい味噌汁とか、味が薄いおかずとか。

明らかに味覚障害の症状が出てる料理を作った時には

何回も何回も俺に美味しいか確認して。









俺が美味しいって言おうもんなら、

貴方は泣きながら怒って料理を下げてしまう。









俺は、味どうこうより、

貴方が作ってくれた事実に意味があると思ってるのに。

貴方が作れば何だって美味しいのに。









「うまい、天才っすね」

「ぁー、またいじった」

「だーから、いじってねぇって！」

「笑ってるじゃん、」

「ぶっ、っふふ、」








美味いよ、本当に美味い。

味覚障害の症状もだいぶ前に薄れた気がする。

前向いてる。向けてるよね？









後ろなんて、終わりなんて。









見てないよね。

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