【luz】あのさ。【歌い手】

53,仲直り ページ22

朝早くに来たため、
時間に充分余裕はあったが
二人に迷惑をかけるのも少しあれだ。

そらから離れて、
自分で涙を拭った。

「ごめん。
なんか勝手に泣いてばかみたい」

そう言うなり、
私は教室を出て
トイレに直行しようとした。

その途端。

「っ…ごめ………、A」

何で。

何で一番会いたくない人に。

何でこんな時に、
彼に会うんだ私は。

私は悪運が強いのかもしれない。

「痛いな。
ふざけんなよばか」

何故か、
彼にも感情的になってしまった。

お前のせいでこうなってるんだよ。

なんて、
内心そう思ってる。

鋭い目付きで睨んでやった。

光、
どれだけ私を泣かせるの。

すぐに離れて、
私は目的の場所までもう一度走る。

あぁ、
もう嫌だな。

なんて思った時、
誰かに名前を呼び止められた。

光じゃない。

振り向くと、
何となく距離を置いていた幼馴染み。

「……まふ」

「ちょっといい？」

なんて、
私の返事も聞かずに
腕を掴んで、学習室まで引っ張った。

今度は何だ。

もう、
頭ぱんくしそうだよ。

「ごめん。
僕やっぱりさ…Aと笑いたい」

なんて、
少し涙目になる彼を見て
昨日のことを思い出してしまった。

「また、
親友に戻ってもいいかな」

なんて、
少し申し訳なさそうに笑う彼。

私だってそう思ってる。

だから、
勿論いいんだけどさ。

「分かってる、
るすくんのことでしよ？
聞いたよ、あっちに戻るって」

どうやら、
私が不機嫌で、且つ涙の跡があるのに
気付いていたようだった。

幼馴染みって怖い。

何回思っただろうか。
まふはよく、人のことを見てる。

「…僕だったら、
るすくんを殴るかな」

「え……？」

まさか、
まふの口からそんな言葉が出るなんて。

「だってさ、
せっかく関係が戻るって思ったら
今度は、心じゃなくて…物理的に離れちゃうんだよ」

なんて、
下を向いてそう言った。

「そんなの最低じゃん。
Aから見たら、悪夢でしかない」

まふは、
少し悲しそうな顔をしながら
そんな事を言った。

まふ、
そんなこと言うんだ。

「だから、
思ってること言っちゃえ。
言いたいこと、全部吐き出しちゃいなよ」

そんな言葉が、
胸の奥に優しく刺さった。

そっか。

どうせ会えなくなるんだ。

言いたいこと、
言っちゃえばいいんだ。

でも、
何を言うの？

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