この手、ぎゅっとつないで (ページ44)

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「あ……」

突然の事で困惑する。
亜門さんが喰種になって生きてたのは才子さんから聞いたけど…ここで再会するなんて。

「A、瓜江、下がれ
あとは俺に任せろ」

「「……」」

たじろぐわたしと瓜江さん。
そんなわたし達をよそに、亜門さんはドナートと話を始めた。

「父さん

おやつに作ってくれたドーナッツ…美味かった」

…その後の話の展開で、亜門さんがドナートの養子だったという事を知った。

「…は、ハハ…！！
“父さん”か…傑作だな」

緩やかに死にゆくドナートは、最期まで高らかに乾いた笑いを響かせていた…。

__________

「A…遅くなって済まなかった」

事を終えた亜門さんに話しかけられる。

「…いえ、ありがとう…ございます」

瓜江さんはあの状態でわたしに加勢してくれたのもあって、また気を失って後ろで座り込んでいる。

「色々あったな、Aも」

そう言ってわたしのアタッシュケースに視線を向ける亜門さん。

どうやら亜門さんはわたしに何があったのか、大体把握してたらしい。

お兄ちゃんのことも…政道のことも。

「…なんだか、懐かしい…感じです」

わたしと…政道、クインケになったけど。
と、最後に亜門さんがとどめを刺してくれて、同じ立ち位置でみんな一緒に戦ったから。

その旨を伝えると、亜門さんはふ、と笑った。

「…心配していたんだ、そんな若い歳で色んな事情を抱えて…Qsとして頑張っていたと聞いて

A」

背の大きい亜門さんに真っ直ぐ見据えられる。

「Aのしてきた事は、何一つ間違ってなどいない」

「……！！」

純粋で真っ直ぐな言葉が胸に響いて……なんだか目の奥が熱い。

「政道だってきっとそう言うさ」そう言って亜門さんは再びアタッシュケースに目をやった。

……でも、もう泣かない。
その一心で唇を強く噛み締めた。

「A…お前とはまた何処かで会える気がする」

「…行っちゃうんですか、」

何処かへ行こうと体勢を変えかけた亜門さんを…すこし引き止めそうになる。

「俺は、俺の正しいと思った事をやる

Aも…決してひとりじゃない、ほら
傍にいつも“あいつ”がいるだろう？」

「……！」

アタッシュケースの持ち手を強く握りしめた。

「A、

またな」

「亜門さん！」

どこかへ行こうとする亜門さんに大声で呼びかける。

「また、いつか！！」

振り返った亜門さんは笑って、どこかへと消えていった。