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ああ。
死ぬ前の時間ってこんなに長いものなのか。
「……？」
自分を見てみると、“オウル”ではなく人間だった頃の滝澤政道の姿になってた。
どういう事だ？
ここは……どこだ？
「政道」
「……！」
俯いてた顔を上げれば、そこにいたのは_____
「有馬……サン」
「……すこし、話をしよう」
紛れもなく“死神”と呼ばれていた、
俺の何より大事な天使の義兄だった。
座って、と言われ俺は白い椅子に腰掛けた。
「俺……」
「？」
「これで、良かったんでしょうか」
Aに俺の運命を委ねた事。
それであの子が目を覚ました時、精神的にも大きな傷を与えてしまう事になるかもしれない。
俺はどうなってもいいけど、Aの事だけが気がかりだった。
「……Aは、」有馬さんは少し間を置いて答えた。
「知ってる通り、幼い頃両親を亡くしてる」
「そして、俺もさっき命を落とした」
「……！」
驚いたと同時に、だから有馬さんもここにいるのか、と腑に落ちた。
「……じゃあ、」
「ああ、Aはどうしようもなく傷ついたままになると思う」
「……」
後悔した。自分の、浅はかな選択を。
「……でも……俺……
こうする以外どうすれば良かったのか………」
「政道」
有馬さんが俺の両肩に手を置くと、気づけば俺はオウルの姿に戻ってた。
「だから、お前がAを守ってやってくれ」
「……！」
……言われなくても。
「任せて、ください」
そうだ。
俺はもう、弱かった頃の滝澤政道じゃない。
“オウル”なのだから。
空っぽを埋めるために人を喰べ尽くしたこと、決して無駄にはしない。
「俺が、責任持ってAを守ります」
A。ごめんな。
もうお前とお互い目を見て話せないのか…寂しいな。
でも、全部無駄にはしないから。
なにがあっても、俺がお前を守るよ。
「ありがとう」
有馬さんは少し目を細めて笑った。
そして俺たちは椅子から腰を上げた。
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作者名：惰 | 作成日時：2023年7月21日 23時
