Dream 14 ページ14
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「え、日本代表の合宿に密着取材ですか！？」
「そう、日本バレーボール協会からお誘いいただいたから、行ってきてくれる？」
あれから試合を何度も見に行ってルールを一通り誰かに説明できるぐらい詳しくなったころ。
出勤と同時に部長から呼ばれ告げられたのは、記者3年目の私の身丈に合わない大きな仕事だった。
「わ、私なんかが行ってもいいのでしょうか、」
「いい機会だし行っておいで。それに、阿川さん音駒出身で夜久選手とは同級生なんでしょ？」
「それはそうですけど、」
「知り合いがインタビューした方が選手もリラックスできるだろうし、君が適任だ」
日程とか詳しいことはこの資料に書いてるから、と続けて言い、資料を渡すとデスクから立ち上がる。
「…期待してるからな」
「…はい！ありがとうございます！」
人気高いスポーツ選手の記事をかけるだけ十分すぎるぐらいなのに、密着取材までできるなんて。
今まで頑張ってきたことが報われているような感覚がして嬉しくなる。
自分のデスクに戻って、渡された資料の内容を確認する。
「沖縄か、行ったことないな…」
合宿場所は沖縄県で、期間は9月3日から13日。
「あ、」
中日である9月9日は私の誕生日で。
やりたかった仕事をしながら年を一つ重ねられることにまた嬉しくなって。
気づいたら自身のスマホに手を伸ばして、日本代表に密着取材しながら誕生日迎えるなんて死ぬのかもしれない、と信之に送信していた。
「……っ、」
“無事お家着いた？”
嬉しいのも束の間、トーク欄に映り込む未読のままのメッセージを見て心が少しざわつく。
それは一緒にバレーボール見た記念と名付けられた日に送られてきたもの。
あの後、黒尾くんは宣言通り私を駅の改札口まで送り、別れ際にはペットボトルの水を渡してくれた。
いつ用意したのか分からないぐらいスマートに渡された水をボーッと眺めながら、気づけば家に着いたのを覚えている。
眺めただけで結局は一口も飲んでいないし、送られてきたメッセージには未だに見てないふりをしながら、私は今返ってきた“おめでとう”に対して返事を送った。
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作者名：倫 | 作成日時：2023年6月30日 15時
