1.願い ページ1
『馬鹿らしい』
外の氷るような冷たい気温によって更に冷やされた手摺に、先程吹き掛けた生暖かい吐息によりほんのり暖められた掌を、包むように添える。
美しい藍色の夜空に、白色の絵具を点々と撒き散らした様な延々と続く夜空の下で
自嘲の意を込めたその詞をポツリと呟いた
初めて見た、君の花咲くような暖かい笑み。
そのひとつひとつを思い出せば、毎日の様に溜まってくる辛い疲れさえも吹き飛ぶ様な、暖かい気持ちになるのに。
其なのに君はある日突然
『好きな人ができた』
と何事もなかったかの様に軽く弾む様な音声で言葉を発した。
心の奥で突き刺さった、このたった八文字の言葉に今までの然り気無いひとつひとつの幸せが、引っくり返る。
酸素のない暗い、暗い、深海の中へと呑み込まれていく気分は一体何故なのか
その暗闇の中で何度も語り掛けるが当然の様に応答はない。
君のその優しい温もりから徐々に影響されてしまった、この大きな傷跡を治す"薬"は君自身しかいないのに。僕の心からすっかり居なくなってしまっては、僕が生きていく事自体に意味がなくなる様な気がした。
絶望の奥深くへと浸ってしまった時には既に自分の真上には黄色い光輝く、美しき満月が写し出されていた。
愛しい君へ。
初めて愛という感情を抱かされた暖かな君へ。
笑顔が似合う可愛らしい君へ。
僕はひたすら強く願う。
-『【全部、夢だったら良いのに】』-
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作者名:柳_ | 作成日時:2017年11月19日 17時