幽鬼の支配者 (8) ページ18
「立てるか…? 病院へ行こう」
そう優しく手を差し伸べるエルザにふるふると首を横に振ると、次はグレイが傍にやって来る。
「怪我してんだろ…?」
『してない…』
ガジルは…あいつは、私を1度も殴らなかった。むしろ……優しさまで感じるほどだった。恐怖から震える私を何度も抱きしめて……
なんで……。レビィやジェット、ドロイ、ギルド……あんなに酷いことをする人なのに…
なんで私だけ……
悔しくて涙が止まらない。
「A……」
『ナツ…』
ポンっと頭に暖かい手が乗って顔を上げれば、ナツが優しい笑顔で頭を撫でてくれる。
「ギルドに帰ろうぜ」
『………うん!!』
そう言って手を差し伸べるナツの手を取って、立ち上がるとグレイが上着を掛けてくれる
『ありがとう』
「…おう。」
ギルドに帰ると、皆が私の姿を見て怒りや悲しみを見せてくれる。本当に暖かいギルドだなぁと思う。
『みんな……ごめんね』
「Aちゃんが謝ることなんてねぇ!!」
「ファントムの奴ら許さねぇ!!!」
「「A!!」」
『ミラ……カナ……』
目に涙を浮かべながら駆け寄ってきてくれるミナとカナに笑顔を見せると余計に悲しげな顔をされた。
今から幽鬼の支配者の支部に乗り込もうもしている皆。仲間のためにここまで怒れる皆は私の誇りだ。
「行ってくるな」
そう私の頭をまた撫でてくれるナツ。そのまま行ってしまおうとするナツの服をギュッと摘み、胸板におでこをくっつける。暖かいナツの体温と匂いに安心する
「ど、どうした?! どっか痛てぇのか?!」
『ナツ…』
「?」
『私行けないから、私の分までこてんぱんにしてきてね』
「!! 当たりめぇだ!」
顔をあげれば、任せろよ!と笑うナツの後ろにいる皆も任せとけ!と声を荒らげている
『みんな任せた!!』
おお!!と雄叫びを上げながら出ていく皆をミラと一緒に見送る。
『ミラ』
「どうしたの?」
『お風呂借りてもいいかな?』
「ええ! ゆっくり入ってきて」
『ミラったら…暗い顔しすぎ』
悲しげな顔をしたままのミラの頬に手を当てて微笑むと、だって…と涙を流してしまう。本当に優しい人だなぁ
『絶対にやり返す』
そう力強くいうと、「Aらしい」とやっと笑ってくれた。
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作者名:セイ | 作成日時:2019年4月16日 22時