生に縋る理由になる人 ページ27
前にケーキ屋の前を通りかかった時は、過呼吸になりかけただけで本当に過呼吸になったわけじゃなかった。
息を吸えば吸うほど、苦しくなって涙が出てくる。
でも、もし、
このまま死ねたらあの人のところへ行けるのかもしれない。
もうこんな想いをせずに済む。
誰も悲しむ人もいない。
「大丈夫です？」
そんなことを考えていたら、知らない女の人に声を掛けられた。
視界は狭かったけれど女の人の隣には背の高い男性が立っていた。
その人の顔は見えなかったけれど、薄れゆく意識の中でなぜかレトルトさんの顔を思い出した。
あんなに優しくしてくれた人にわたしと同じ想いをさせる可能性、0じゃないかもしれない。
「ゆっくり息して大丈夫だからね？」
女の人は落ち着いた柔らかい声で呼吸のリズムを取ってくれた。
死にたいならこのまま息を吸い続ければ呼吸困難で死ねるかもしれないのに、彼女の声に合わせて呼吸を整えてる自分がいた。
レトルトさんに迷惑をかけるのは出来なくてレトルトさん不在時の家では死なないと決めた。
それならここが今、絶好の死に場所なのに、いざ、死と対面したら怖くなってしまった。
だって、死ぬ前に、1度だけでいいからレトルトさんに会いたいと思ってしまった。
だから、まだ死ぬわけにはいかないって、そう感じてしまった。
死に近いはずなのに、息を吸い過ぎるという行為は死よりも生に縋ってることを実感した。
視界がさっきよりクリアになってきたあたりで立っていた男性が彼女に急かされたようでしゃがみこんで顔が見えた。
……え、キヨ……くん？
見間違えかな？
意識もまだ朦朧としているし……でも、声も顔も襟足だけ赤い髪も夕方に会った時に見た服装もまんまキヨくんだった。
と、言うことはあの子は誰だろう。
彼女……なのかな……随分親しそうだなぁとぼんやり考えていたらいきなりキヨくんにお姫様抱っこされて驚いて落ち着いていた呼吸がまた乱れた。
さっきまで一定のリズムを保っていた呼吸の仕方を忘れてまた苦しくなったところでさっきの女の人が駆け寄ってまたリズムを取ってくれた。
気付くとわたしはホテルの一室に横たわっていて周りを見渡すと心配そうにわたしを見ている女の人、その隣にキヨくんがいた。
「あ、気付きました？」
「あ、あの、すみません……ありがとうございます」
「平気ですよ、レトルトさんに連絡しますか？」
「えっ」
突然のことに驚いてキヨくんの方を見ると「ども」と言って軽い会釈をされた。
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luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» ずっと温めてきた作品だけに思い入れが強いので真っ直ぐに作品を読んで褒めて頂けて感無量です…！彼だからこの結末になって彼だからこその作品になった気がします。とp4の関係性が大好きなので気を遣って書いたので気に入って貰えて良かったです！ (2021年8月18日 0時) (
レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - 普段常識人だからこそこういう禁断の恋一歩手前のレトさんが凄く輝いている気がしました。lucoさんの人選が流石過ぎます。今回の世界線はそれぞれの立場が切な過ぎて胸痛いです。その分報われて感動でした! それに今回は特にtop4の関係性が見えて最高でした! (2021年8月9日 3時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - ゆりさん» ゆり様コメントありがとうございます！感情直球とっても嬉しいです！！読んで頂けて本当に感謝です（；_；） (2019年10月11日 11時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
ゆり(プロフ) - すごくすごく好きです。お疲れ様です！ありがとうございます！！ (2019年10月11日 10時) (レス) id: 284b51d183 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：luco
| 作成日時：2019年3月8日 1時
