雑貨屋みたいなケーキ屋 ページ33
駅前に素朴な佇まいの店があることに気付いたのはホテルに泊まり始めて3日くらい経った頃だった。
駅周辺は中華料理店が異様に多いしチェーン店も立ち並ぶ中、そこだけ異色を放っていた。
なかなか昼前に動き出すことに慣れなくてぼそぼそとした目でしか確認してなかったから何の店かはわからなかった。
「おすすめですか……」
何週間かしてAと仲良くなって、夜勤の1人になる時間帯を狙って話すようになって少し経ってからここらの店でおすすめとかある?みたいな話になったことがあった。
Aは領収書を折る手を一旦止めて顎に指を当ててうーんと悩み始めた。
あ、何か少し素が垣間見れて質問チョイス正解だったなと頬が緩みそうになった。
「駅前のケーキ屋さん美味しいですよ」
あっ!と思い付いたように言ったAは「知ってます?その名の通りDolceって名前なんですけど」と言いながら店の方角を指さした。
俺は頭の中に地図を広げて「どるちぇ」なる名前の店を探したが思い当たる節がない。
そして気付いた、あそこがケーキ屋ってことに。
少し興奮気味にそこのケーキ屋の話をするAは嬉しそうだった。
もし2人で出掛けることが許されんならそこに行こうと心に決めていた。
状況があまりよろしくねぇが、何はともあれ2人で出掛けるのは初めてと言うことに俺は浮き足立っていた。
「見た目が完全に雑貨屋なんだよなー」
ケーキ屋が見えてきたあたりでAの方を見るとそれまで嬉しそうにあのケーキがおすすめです、チョコ好きですか?とキラキラな笑顔で雑談していたのに「ん?」と言い足を止めた。
「キヨさん」
突然のキヨさん呼びに驚くと共に心臓が跳ね上がった。
けど、何だ?
何かが違う。
違和感はAの視線の先にあった。
ケーキ屋の前で喉元を抑えてしゃがみ込んでる女ガいた。
俺とAは目を合わせると頷き、駅の人混みを掻き分けてケーキ屋の元へと急いだ。
下心が一切ないと言ったら嘘だけど小さなAが人混みに流されないように咄嗟に手を握るように掴んだ。
Aは、その手を離さず、きゅっと、強く握り返してくれた。
「大丈夫ですか?」
駆け寄るとAがすぐさま女の目線に合わせるように肩を抱いた。
ただ、気分が悪いだけかと思ってたけど、どこか様子がおかしく息苦しそうにもがいている。
「A、これやばくねえか?」
立ったまま声をかけると「過呼吸……かな?」と呟いたAは彼女にニコリと微笑みかけた。
よりにもよってその部屋かよ→←ただ、ひたすらに、だきしめたい
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なみの - とっても面白いですね( ´∀`)相変わらずの天才っぷり・・さすがです!毎回素敵なお話ありがとうございます(≧∀≦) (11月5日 13時) (レス) id: 20a9a81cbb (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - 赤の黒犬さん» これは完全に動画内のヨさんのテンションで書いてたので反応どうかなと思っていたので好きと言って頂けて良かったです。たくさんの作品にコメント本当にありがとうございます。レスが遅くなりましたが毎回見て元気を貰ってます! (2021年8月18日 0時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
赤の黒犬 - キヨさんの嫉妬とか御馳走様過ぎる。キヨさんが元々レトさんに憧れていた節があったからこそキヨさんの嫉妬って映えると思ってニヤニヤしてました。キヨさんがドルヲタとか女優ヲタとして動画内で喋っているテンションで恋して、本人っぽさが倍増するのも好きです。 (2021年8月9日 2時) (レス) id: d5158b45c8 (このIDを非表示/違反報告)
luco(プロフ) - siratama〇さん» siratama〇様、コメントありがとうございます!初の学パロ以外での長編ですので読者の方の反応が気になっていたのですが好みと言って下さりとても安心しました。そして長編に対しての励ましのお言葉もありがとうございます!とても嬉しいです。頑張ります! (2019年3月9日 22時) (レス) id: 2a3978e9c4 (このIDを非表示/違反報告)
siratama〇(プロフ) - 好みof好みです。長編苦手だと仰りますが胸を張って得意だと叫べるレベルで素晴らしいです。素敵なお話ばかりで読むのが楽しみの1つになっています。ずっと応援しております、頑張って下さい! (2019年3月9日 20時) (レス) id: 1503b2e324 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:luco | 作成日時:2019年3月7日 1時