第20.5話 ぼくのめだかちゃん ページ27
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なあ、ゆり。
覚えてないかな。
俺たちが初めて会った時のこと。
きっかけは、とあるデザイン系の専門学校の学園祭のゲストに招かれたことだった。
ショーのゲストモデルとして、学生さんたちのつくった服を着てランウェイを歩く。
専門の学生たちは、みんな夢に向かって頑張ってるって感じで、ちょっと羨ましくも感じた。
自分が経験することのできなかった学園祭というやつをもう少し楽しんでみたくて、キャンパス内をフラフラしていた時。
「…ねえ、あれ藤井流星だよね?」
おそらく興味本位だろうが、俺に気づいた女の子の2人組に明らかにつけられている。
それに時々スマホのカメラも向けてきているようだ。
ファンの子だったらありがたいが、隠し撮りなどは事務所の手前容認するわけにはいかない。
…しゃあない、捲くか。
速度を早めて、人をかわしながら歩いた。
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適当に歩いて、屋内の講堂に入る。
屋台などが出ている屋外に比べて人気も少ない。
それぞれの教室が展示スペースになっていて、有志の学生が作品をだしているようだった。
開放された一室に入ってみると、壁ほどもある大きなアートパネルが展示されている。
「…きれいやなあ」
都会の雑踏のモノクロ写真に、色とりどりの魚がコラージュされている。
魚たちがビル街や人混みを縫うように泳ぐ姿に、しばし目を奪われた。
「流星どこー?」
「こっちじゃない?」
「…やべっ」
俺を探す声が聞こえて我に帰る。
パネルの後ろのデッドスペースに入れるのに気がついて、思わず隠れた。
しかし、どうやら先客がいたようだ。
猫のように丸まって、眠っている女の子。
「……気持ちよさそうに寝よるなぁ」
なんだか毒気を抜かれて、女の子の隣によいしょっと腰を下ろす。
太陽の光にあたって榛色に透ける髪の毛を、さわってみたくてつい手を伸ばした。
「……んー…」
「ふふ、ごめんごめん」
身じろぎをしたが起きる気配のない女の子。
窓の外からは、遠くでお祭りの喧騒がきこえてくる。
この空間だけ、切り取られた別世界にいるみたいだった。
この子のまとっているゆるい空気感のせいだろうか。
居心地が良くて、しばらくそうしていた。
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るーちょ(プロフ) - まっちゃさん» コメントありがとうございます!応援いただきとても励みになります(T-T)最終話までぜひお付き合いください。 (2019年7月19日 20時) (レス) id: 5adc9338ef (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃ(プロフ) - とても面白いです! 応援してます! (2019年7月19日 6時) (レス) id: 622cccb941 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lucio | 作成日時:2019年7月8日 18時