第5話 ページ15
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新しい担当の小瀧さんとの顔合わせを終え、おそらく良好な滑り出しとなったんだろう。
だいぶいらんとこまで晒した気がするけど…
そんな感触を胸に、アルコールも入っていないのに、なんだかふわふわした気持ちをよしっと切り替えて、会社のドアを開ける。
「もどりましたーーっと」
時刻は午後9時20分
この時間でも我らがJワークスは稼働中なわけで、ただいまなんて挨拶がうってつけのオフィス。
「うお、」
いきなり扉を開けたので、制作室にいたしげちゃんが驚いたリアクションをとる。
淳太さんや廉くんは、もう帰ったみたい。
「しげちゃんまだやってたんだ」
「まあなあ…」
「S社の入稿、終わんなかったの？」
「ちゃうくて！別案件やねん…
そっちこそ、今日の仕事は午前中に終わらせたんやなかったっけ？」
「………ちょっと、巻きが入る予感がビシビシしてきて。」
「…なんか悲しなってくるな。俺らの仕事がスケジュール通りに行くことなんて、あるんかな……」
と言って肩を落としたしげちゃんは、それでもすぐにバッと起き上がって気合を入れるように声を張った。
「しゃ！終電までにはカタつけたるー！」
あ、そっか。
会社の近くにあるという彼女さんの家には、泊まれないのか。
喧嘩になっちゃうって言ってたもんなー。
〈仕事とわたしどっちが大事なの！？〉
なんてテンプレートが思い浮かぶ。
まあ、暗く(？)なっててもしょうがない。
しげちゃんの隣のデスクに腰掛けて、PCのスイッチを入れソフトを立ち上げる。
作業中のファイルを開いて、ぐいっと肩を回して仕事モードに。
「一気に片付けて帰るよ、しげちゃん」
「おう！」
「こうなったらノンストップだ！」
「せや！ノンストップ猫ちゃんや！」
「わたし終電の一本前で帰るから」
「ほんじゃ俺は二本前で帰ったんねん」
お互い顔はモニターと向き合ったまま、ぽんぽんと意味のない会話が続く。
おしゃべりの応酬の間にも、作業の手は止まらない。
それがデザイナーの習性。
「…ねえねえ、」
「なんや」
「ノンストップ猫ちゃんって何？(笑)」
「…知らん(笑)」
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作者名：Lucio | 作成日時：2019年6月9日 14時
