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「菫様……」
真っ直ぐに俺を見つめた菫様の瞳が、ふわりと緩んで。
その手がゆっくりと動いて、俺の頭の上にぽん、と乗せられた。
ぽん、ぽん、ぽん、なで、なで、なで……
すぐに離れていくかと思った菫様の手は、頭の上を滑るように動き続けて。
「ちょ、菫様?(笑)」
「オマエ、ホント丁度いい位置に頭あるな(笑)」
「暗に俺のことチビって言ってます?(笑)」
「否定はしねぇなぁ(笑)」
「ひでぇ(笑)」
菫様の持つ雰囲気だろうか。
気が付けば俺は随分と砕けた口調だった。
正義と信念の菫様。
罪を憎んで、人を憎まずを体現しているかのような方だ。
この方は、罪があるという理由で同期生さえもを断罪した過去がある。
涙ながらに、それでもはっきりと罪は罪だと言ってのけたこの方の強さには、本当に頭が下がる。
その、菫様が執行させないと言う。
この方が菫の地位にいる限り、重すぎる量刑が執行されることはないかもしれない。
首を突っ込むなと釘を刺されたけれど。
でも。
それでも。
俺は───────……。
「とりあえず、城へ戻るか。」
「菫様は、お帰りになるところだったのではないのですか?」
「ん?ああ、でも城に用が出来た。」
菫様と協力して木製の机を動かし地下通路への戸を開いた。
地下ならではの、湿ったひんやりとした空気が吹き上げる。
雨に濡れた身体に、その風は冷たかった。
薄暗い道。
外の雨など忘れてしまいそうな静寂に、カツンカツンと足音だけが響いて。
しばらく歩くと、見えてきた扉。
あれは──────……
「あそこ、小部屋なんだよな。その先の鍵が開かねぇから、何処に繋がってんのかわかんねぇけど。」
「…………へぇ、そうなんですか……。」
菫様の言葉に、何とか返事を返す。
たぶん、位置的には学舎だろうな……なんて言ってる菫様に、もう何て返したかもわからない。
あそこは。
あの部屋は。
─────きたーま……
─────寄ってく?
っ、……
頭の中で響くその声は。
甘くて苦い記憶。
過去と現在が交錯する。
「中、見てみるか?」
「……いえ、……行きましょう……。」
あの返事を見て、冷静でいられるわけがない。
あの部屋は、俺と藤ヶ谷の想い出の全てが詰まってる。
二度と取り戻せない過去が。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時