虹の黄昏 Ki ページ46
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降りやまぬ雨。
既にずぶ濡れの俺は、雷鳴が轟く中を歩く。
もう、何処へ向かって歩いているのかもよくわからない。
ただ、手首が熱くて。
心が……痛くて。
ガシャンッ!!!
不意に雨音に混じって何かを倒したような音が響いて。
そちらを向くと、酔っ払いらしき人影が積まれていた酒瓶を倒したようだった。
「ってぇ……」
素通りしようとした俺の耳に、雨音に混じって聞こえてきた声。
え!?
聞き覚えのある声に、声の主を凝視した俺の目に飛び込んできたのは。
まさか。
雨でけぶる視界の中で、立ち上り膝に付いた泥を払うその姿は。
「菫様……?」
「ん、あ?北山か?」
俺の声に顔を上げた菫様は、一瞬訝しんだような顔をして。
それを瞬く間に消し去っていつもの笑みを浮かべた。
けれど、足取りは怪しく、酔っ払いのそれだった。
「ちょ、大丈夫ですか?」
「おー、オマエ何やってんだよ、こんなとこで。」
思わず近寄って身体を支えた俺の肩をバンバンと叩きながら菫様が笑う。
肩を組むような姿勢になった俺の鼻先をふわりと酒の匂いが掠めた。
相当酔ってるな……。
こういう時、俺は自分が大人になったことを実感する。
心の中はぐちゃぐちゃなのに、先輩を目の前にすれば自然と身体も頭も動くのだから。
「菫様こそ、雨の中何してらっしゃるんですか。」
「俺ー?俺は、呑んでんだよー。」
冷たい雨が降る中で、転ぶほど呑むなんて。
菫様がお酒が好きだという話は聞いたことがあったけれど、この状況と先程の宮田の話も加味すれば……恐らくは自棄酒だ。
「菫様、大丈夫ですか?」
「大丈夫だっつーのー……。」
言葉はそれなりに返ってはくるものの、フラフラの菫様は足取りが怪しい。
俺よりも頭ひとつでかい菫様を支えて歩くのは、かなり厳しいものがあった。
しかも、更にひどくなる雨足に二人揃ってずぶ濡れだ。
「菫様、送りますよ。家何処ですか?」
「んー?ああ、とりあえず雨宿りしようぜ。」
雨宿り……こんなずぶ濡れの状況で雨宿りとか意味があるのか甚だ疑問だが。
菫様は、もう既にその気のようで、そこ右なー、と緩く言葉を吐き出した。
菫様の言う通りに歩いたその先は。
そこは。
……小さな家だった。
ここは─────────……。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時