紅桜の鎮魂歌 第三章

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「横尾さんの宮田に用事って？」


「あ、ああ、うん……。」


何気なく話を振ってみたら、一気に硬くなる横尾さんの表情。
言い淀む表情を見ながら、いない方がいいのか？なんて思いが浮上した。


「んー……もしかして、国の話？」


場の空気に似合わない玉の緩やかな声が響く。
ハッとして横尾さんと宮田が玉を見て。
詰めていた息を吐き出した。


「敵わないな、裕太には。」


「ん？違うよ、俺もその話を宮田にしにきたから。もしかして、わったーもかなぁって。」


国の、話。
財務の黄色と経済の橙が、司法の紫に……？


「もしかして、ミツも？」


三人の視線が俺に集まる。
その顔を見渡して、俺はゆっくりと頷いた。


そうだ。


今日、俺が赤館で聞いた話を確かめに宮田の部屋へとやってきたのだ。


「宮田。」


「ん？」


「この前、俺と藤ヶ谷が捕まえた殺人犯な、無色の刑罰ってホントか？」


「あ……いや、まぁ……うん……。」


歯切れの悪い宮田の返事。
今日、赤館でその話を聞いた瞬間、その量刑に驚いた。

重すぎる。

もちろん、人一人の命を奪った者に刑が課せられるのは当然だ。
しかし計画的なものではなく、突発的に起こしてしまったものである。
人の命を奪ったのだから、重い罪に処されるだろうとは思っていたが、それでもせいぜい終身刑のみだろうと踏んでいた。

それが、無色の刑罰が課せられるという。

終身刑とは、その名の通り無期限で牢へと入れられる刑罰で、皇帝の即位など国にとっておめでたい時などに恩赦として刑を軽くしてもらえるケースがあるものだ。
つまり、終身刑は十数年の刑期はあるものの、人生のやり直しがきく刑罰だ。

しかし、無色の刑罰は違う。
終身刑と同様に刑期に期限がないことは同じだが、無色の刑罰は薬により喉を潰され声を失うのだ。
そして喉に十字の焼き印を捺される。
それは、その身体に罪が刻まれるということで。
声が出せず喉元を隠す人間は、咎人である……ということは、国中の民が知っている。

歌声が力を持つこの世界で、声を失うということは全てを失うことに近い。
しかも、いくら恩赦によって仮釈放を受けたとしてもまともな仕事には就けないだろう。
一生消えない罪の烙印を捺された者は、とても生きにくくなる。


「いくらなんでも、重すぎはしないか？」


「だよね……。」


俺の問いかけに、力なく宮田は頷いた。

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