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「ふふふ……ははは……」
俺は泣きながら笑ってた。
呆れて、笑うしかなかった。
俺は、今この瞬間まで一度も……ただの一度でも考えた事がなかったんだ。
北山が、誰かに恋をするなんて。
自分でも信じられないほど、おめでたい頭だった。
信じられない。
バカみたい。
北山だって生きていて、俺と同じだけの時間が流れてて。
だから気持ちはいつ動いてもおかしくはなくて。
もう、5年だ。
5年前の恋なんて、心の中で既に風化して当たり前だ。
何もかもがセピアに色褪せていくだろうことを、考えもしなかった。
傷付いたとしても、瘡蓋さえも残っていないほどの月日が流れている事を失念していたなんて。
俺は………バカだ。
溢れる涙は止まることを知らないかのように、後から後から。
幾筋もの涙の跡に新しい雫が零れて落ちる。
あの日と何も変わらない部屋。
俺と北山の全てが詰まった部屋。
初めて抱かれたのもここだった。
────っ、ふじがやっ、……くっ……
初めて抱いたのもここだった。
────ああっ、んぁっ、……はぁっ、ん……
熱い身体。
逞しい腕。
優しい指先。
甘い吐息。
全てを欲しいと望むほどに……
愛した人─────……。
あの時、もう無理だと思った。
それは嘘でも偽りでもなかったけれど。
急激に心が薄ら寒くなる。
あの手に触れる権利を放棄したのは俺自身だ。
─────太輔、本当にいいの?
いつだったかの渉の言葉が頭の中で木霊する。
いい?
何が?
俺は、あの問いに何と答えたのか。
いいわけが無かったのに。
「ふっ、……っ……くっ……」
漏れ出る嗚咽を止めることが出来なくて。
既に過去だと思っていた想いは、何ひとつ色褪せてはいなかった。
何も変わらない部屋。
そこに、極彩色の思い出が鮮やかに甦る。
俺は全部が欲しかった。
北山のすべてが。
でも北山は、色々なものに好奇心も旺盛で。
人間関係も幅広くて。
そうだ。
俺は。
100ある心なら100欲しいと望んだ。
そして。
100手に入らないなら、1もいらないと切り捨てた。
何て我が儘で。
何て子供な。
身勝手な恋だった。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時