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「太輔、本当にいいの?」
寄宿棟の渉の部屋で、細かいことは何も聞かず渉はただそれだけを俺に聞いた。
俺を真っ直ぐに見つめて。
それは誤魔化すことを許さない瞳だ。
「ん……いいんだ。」
それしか言わない俺に、渉はまたも困ったように笑って。
そして、お茶を淹れてくれた。
渉の持つ空気が心地よかった。
何も言わなくても、俺を理解してくれているようで。
北山と一緒にいる時とは全く違う、穏やかな自分の心。
あの
それに、安心する。
「太輔がいいなら何も言わないけど……」
そう言いながら渉は俺の隣に座った。
俺は何も言わずにその肩に頭を預けた。
北山とは、全く違う肩の感触。
骨ばった渉の肩は、凭れると骨が頭に当たって少し痛い。
でも、この穏やかさは俺をきっと癒してくれる。
俺は、もう本当に疲れていた。
色んなことに。
何度も期待して、何度も失望して。
気が付けば俺の心は……
「ははは……穴だらけ……」
「ん?何?」
「何でもないよ……。」
北山は無意識で。
俺ばかりが気にして。
北山の無自覚の刃で刺された心は、気が付けば穴だらけで。
その穴から、北山を好きだという気持ちも流れて出ていってしまったのかな……?
今は、好きだと思う気持ちよりも、苦しさや辛さの方が大きくて。
傍にいたいとは、もう思えない。
苦しいんだ……北山を好きでいるのが。
だから。
沈めてしまおう。
この心ごと。
いつか。きっといつか。
全ては想い出になる。
「わた……。」
「ん?」
「頭、撫でてよ。」
「はぁ?」
「いいから。」
強請る俺に、仕方ないといった風情で渉は柔らかく頭を撫でてくれた。
それは、優しい手だった。
恐らく渉は気付いてる。
俺と北山の間に何かがあったことを。
もう、いいんだ。
渉の手は、優しい。
がさつな北山とは違う。
俺を無意識に傷付ける手と違う。
違うことに、まだ少し視界が滲むけれど。
終わりにするって決めたから。
優しくない熱い手を求めてしまう自分を封印するんだ。
強く強く握り締めた手の中で。
寂しげに赤茶の鍵が熱を持っていた。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時