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陛下の前で歌ってみせた後、もうしばらくそこにいると言う陛下を残して俺は螺旋階段を下った。
代理様に、昨日の事で報告すべきこともあり俺の足は代理様の執務室へと向いていた。
ちょうど十字に交差している場所に行き当たった時だった。
左へ曲がれば突き当たりが代理様の執務室。
前から歩いてくるのは……
藤ヶ谷……。
俯き加減で歩いてくるその姿に、少しだけ胸の奥が騒ぐ。
そうして、藤ヶ谷がその顔を上げて。
視線が交わって、藤ヶ谷の足が止まる。
!?
藤ヶ谷の目は真っ赤に腫れていた。
いつもの、涼しげで切れ長の目元が腫れ上がって痛々しい。
どうしたんだよ……。
そう、思うのに。
想いは言葉にはならない。
ただそこにあって。
俺の中に留まる。
いつもはすぐに逸らされる視線が、交わったままで。
藤ヶ谷は何も言わずに俺を見つめていた。
相変わらずの無表情な瞳。
その瞳が、何も言わずに俺を見つめる。
逸る鼓動。
熱が、上がる。
バカみたいだ。
たったこれだけで。
そう思うのに。
らしからぬ藤ヶ谷に俺は曲がるはずの所を通り越して、藤ヶ谷の前まで来ていた。
「藤ヶ谷……?どした……?」
「っ!?」
視線を逸らさない藤ヶ谷に、俺は真っ正面から声をかけた。
それに、藤ヶ谷は目を見開いて。
俺自身も、自ら出たその声に驚いた。
だってこれは。
この甘さは。
この温度と糖度は。
遠く、霞の向こうへと消えかけているあの頃と、寸分違わぬもので。
俺の声は、藤ヶ谷に声をかける時……こんな音色をするんだったか。
そう思って、しばらく藤ヶ谷に話しかけることも無かったのかと思って切なくなった。
普段は、その無表情の瞳が辛くて怖くて。
声をかけることさえも躊躇われて。
けれど、こんな藤ヶ谷を見て見なかったふりは出来なかった。
驚きに目を見開いたままの藤ヶ谷の痛々しい目元に、思わず手が伸びた。
逸らされない視線に、調子に乗ったのかもしれない。
久しぶりに近い。
藤ヶ谷が。
ゆっくりと、まるでスローモーションのように伸びる俺の指先。
その指先は、微かに震えている。
真っ赤に腫れたその目元。
どうしたんだよ?
オマエの心をそれほど揺らすなんて……なぁ、何があったんだよ?
俺の震える指先が、その藤ヶ谷の目元に触れる……
その瞬間。
藤ヶ谷の身体が、スッと後ろへ下がった。
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流華(プロフ) - 充瑠さん» 充瑠さーん♪お久しぶりでーす♪♪わぉ、ロケ地に行かれたんですか!?羨ましいー( ☆∀☆)私も行きたいなぁ。頑張って更新していきますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - ここさん» ここさん、こんにちは。コメントありがとうございます♪藤北さん……拗れてまさからね(笑)どうなることか(^_^;)頑張りますので、今後もよろしくお願いいたしまーす(*´∀`)♪ (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - 椿さん» 椿姫……(笑)喜びの舞だったり、机の角で頭ぶつけたりと忙しいな(笑)ああ、卓袱台返しの準備もするんだっけ?(笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつも、ありがとうございますー♪ヽ(´▽`)/ゆっくり進んでます(笑)そうです、お墓ですよ。あれが、誰のお墓なのか…。ポイントですね、それ(笑)伏線……回収出来るはずです(たぶん/笑) (2018年10月26日 13時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
充瑠(プロフ) - 流華さーん!!お久しぶりです。いよいよですね!実はこの夏に、ロケ地に行ってきまして。まだ記憶も鮮明なので、今後が楽しみです^^いつまでも待ちますー (2018年10月21日 0時) (レス) id: 5cca4c3768 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年6月8日 11時