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横尾さんのハンカチできつく縛ったおかげて血は止まりつつあるが、それでもじんじんとした痛みは消えそうになかった。
くそっ、……痛ってぇんだよ……。
立ち上がってみるものの、やはり傷が痛くて。
俺は脚を引き摺るようにして石壁に手を付きながら歩いた。
じんじんと痛む傷口。
「……何やってんだ、俺……」
トンネルの出口に差し掛かり、見えた夜空に光る星をぼんやりと見上げた。
本当なら今頃、地方から帰ってきた藤ヶ谷の早口で捲し立てるような毒にも薬にもならないような取り留めのない話を聞いて。
柔らかな笑顔を愛しく思って。
それで、あの秘密の部屋で愛を囁いていたはずなのに。
知らん顔することだって出来たのに、放っておけなくなって横尾さんまで巻き込んでこんなところまで来て。
疲れて帰ってきた藤ヶ谷を労ってやることもせずに、不機嫌な顔までさせて。
あまつさえ、門限破りに怪我まで。
もう、本当に。
何やってんだ、俺……。
「藤ヶ谷ぁ……。」
思い出したら会いたくて。
ひどく心許ない感覚のままにその名を口走っていた。
頭の中で、柔らかに笑う藤ヶ谷の顔が浮かんで。
────きたーま……
甘く響く、湿度を含んだ声。
ああ、そういえば……しばらくあの呼び方を聞いてないな……なんて、どうでもいいようなことを思った。
っ……!?
誤って体重をかけてしまった傷付いた脚に痛みが走る。
俺は、その場に崩れ落ちそうだった。
その時。
ガシッと腕を捕まれた。
「何やってんだ、オマエ。」
いつの間にか近くに来ていた男が、俺の腕を支えていた。
「っ!?」
見慣れているけど、見慣れない人。
俺は、回らない頭でその人を見上げた。
どうしてここに?
「あーあ、またザックリいかれてんな、これ。歩けねぇの?」
力強く甘い声。
俺の、未だ血の止まりきらない脚を見ながら、その形のいい眉をしかめる。
睫毛、長いんだな……この人。
間近で見る整った顔立ちを見ながら、そんなことを思ってた。
すると、男の後ろからもう一人の声が響く。
「それどころではないだろう。とりあえずあそこまで運ぶぞ。」
「ああ。」
.
もう、本当に、貴方がたは神出鬼没ですか。
.
「紅様……陛下……。」
「喋んなくていいから。」
何も言わずに紅様が俺を背負った。
その背中は、ひどく大きくて温かかった。
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流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーんo(^o^)oどっちも悪くなくて、どっちも悪い(笑)言葉足らずの二人(笑)長編!?いや、これでも長いって(笑)もう少し短くまとめたかったのにー(^_^;)頑張って書くーっ♪ヽ(´▽`)/ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつもありがとうございます(*´∀`)♪ドキドキと言っていただけて嬉しいです♪ヽ(´▽`)/もう、詰め込み設定は悪い癖ですホント(笑)お話から情景を感じ取ってくださるSIZUKUさんの感性、大好きですー(///ω///)♪ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さぁん(o^^o)壮大な世界観に毎回引き込まれてるよ〜!ミツと太輔の心情が痛くて(TдT)もう、どうしたら〜。物語を彩る美しい情景にもうっとり♪もっと長編プリーズ!っと、ワガママな事を言う読者(笑)移行頑張って!楽しみにしてるぅ!めっちゃ!(//∇//) (2018年6月3日 19時) (レス) id: 6d214b6dc8 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!素敵なお話をありがとうございます。ドキドキします。終わりが来て欲しいような、そうでないような笑 流華さんのお話を頭の中で映像化するもなかなか。だから引き込まれていきます。また更新を楽しみにしてます。 (2018年6月3日 0時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - あーさん» ああ、すみません……早とちりを(汗)お気遣いの言葉ありがとうございます(#^.^#)亀更新ですみません(^_^;)頭の中では出来上がっているのですが、文字に起こしている時間が(笑)ゆっくり進めて行きますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年5月26日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月22日 17時