赤の喪失 Ki ページ40
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「は……?」
ドクンッ────────。
今、何て言った?
時間が止まったのかと思った。
もしくは、俺の知らない言語を話されたのかと。
それは、藤ヶ谷が派遣されてから二週間ほど経って、明日戻ってくるはずの日だった。
俺達が集まっていた寄宿棟の食堂に、
───まだ情報が錯綜してて、詳細がわかんないんだけど、派遣団で行方不明になった歌うたいがいるらしいんだ。
碧様は大きな身体を小さくさせて。
苦しそうに言葉を吐いた。
「それは、太輔が……ってことですか?」
声の出ない俺に代わって、横尾さんが口を開く。
その声は、少しだけ震えていた。
「いや、まだそれが誰かはわかってないんだ。とりあえず、今回の派遣に帯同してる歌うたいの同期生に話しておいた方がいいかと思って。」
「ガヤさんが……」
「ガヤ……。」
周りが騒ぐ中、俺はまだ声を出せないでいた。
藤ヶ谷が。
もしも、藤ヶ谷が。
心臓が、ひどく軋んだ音を立てる。
声はまだ出ない。
だって。
そんな。
こんなのは。
だけど。
俺は震える足を誤魔化すように、食堂の椅子にドカッと座り込んだ。
不安そうに弟達の視線が俺に集まる。
「まだ、藤ヶ谷だって決まったわけじゃない。」
そう言って、皆の顔を見て精一杯笑った。
笑え。
笑え。
笑え──────。
震えそうになる手を必死で握り締める。
俺が、取り乱してどうする。
そう唱えながら、顔に笑顔を張り付ける。
「そうだね、まだガヤだって決まってないよね。」
玉の顔も蒼白ながら、しっかりと瞳に光を宿して。
それは、リーダーとしての自覚を固めた…旗を下賜されたあの時と同じ色の瞳をしていた。
その瞳が、俺と視線を合わせて力強く頷く。
玉は、強くなった。
「うん、太輔は大丈夫だ。」
「そうだよね。あの慎重なガヤさんが無茶なんてするわけないね。」
俺と玉の言葉に、明らかに柔らかくなる空気。
そうだ。
藤ヶ谷じゃない。
藤ヶ谷なわけがない。
自分に言い聞かせるように何度も何度も胸の中で唱えた。
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流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーんo(^o^)oどっちも悪くなくて、どっちも悪い(笑)言葉足らずの二人(笑)長編!?いや、これでも長いって(笑)もう少し短くまとめたかったのにー(^_^;)頑張って書くーっ♪ヽ(´▽`)/ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつもありがとうございます(*´∀`)♪ドキドキと言っていただけて嬉しいです♪ヽ(´▽`)/もう、詰め込み設定は悪い癖ですホント(笑)お話から情景を感じ取ってくださるSIZUKUさんの感性、大好きですー(///ω///)♪ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さぁん(o^^o)壮大な世界観に毎回引き込まれてるよ〜!ミツと太輔の心情が痛くて(TдT)もう、どうしたら〜。物語を彩る美しい情景にもうっとり♪もっと長編プリーズ!っと、ワガママな事を言う読者(笑)移行頑張って!楽しみにしてるぅ!めっちゃ!(//∇//) (2018年6月3日 19時) (レス) id: 6d214b6dc8 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!素敵なお話をありがとうございます。ドキドキします。終わりが来て欲しいような、そうでないような笑 流華さんのお話を頭の中で映像化するもなかなか。だから引き込まれていきます。また更新を楽しみにしてます。 (2018年6月3日 0時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - あーさん» ああ、すみません……早とちりを(汗)お気遣いの言葉ありがとうございます(#^.^#)亀更新ですみません(^_^;)頭の中では出来上がっているのですが、文字に起こしている時間が(笑)ゆっくり進めて行きますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年5月26日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月22日 17時