紅桜の鎮魂歌 第二章

※ ページ39

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抜けるような青い空に、鳥が飛んでいく。
行軍は続き、俺の想いも空へと溶ければいいのに。

終わりにしてしまえばいい。
これ以上、苦しいのはもう嫌だ。

北山も、北山なりに俺を想ってくれたんだろうとは思う。
けれど、もう……その温度差に泣くのは疲れた。
期待をするから落胆するんだ。
ならば、初めから期待などしない状況にしてしまえばいい。

二人の日々が、過去に変わるのは辛いけれど……それもきっと一過性で。

時が、全てを解決してくれる。

もう。
これで終わりだ。

再び見上げた空には先程にはなかった薄い雲が見えた。
その綿菓子のようにふわりと浮かぶ雲は、ふっと息を吹き掛ければ飛んでしまいそうな覚束なさで。
ほら、そうやって変わっていく。

景色も……




人の心も。




だから……もう、良いんだ。


「藤ヶ谷？どうした？」


気が付くと、紅様が横に並んでいた。
ひどく心配そうに俺を覗き混んで。

相変わらずの整った顔立ち。
形のいい眉を少し寄せて。


「いえ……何でもありません。」


「そうか？気張りすぎるなよ？歌うたいになって初の派遣団だもんな。」


「はい、気を付けます。」


「おう、じゃあな。」


紅様は、いつも行軍中に色んな所を見て回る。
深紅の紅様の旗の下にご本人がいることは少ない。
何処で誰がどうしているか、いつも把握される為だろう。
この方は遠征中、いつも一番危険の伴う所にいる。
そういうところが、他の歌うたいからの尊敬と憧憬を集めるのだ。

そうして動き回る紅様の傍らに寄り添う陛下の姿が見えるような気がした。


俺も、貴方がたの様になりたかった。


互いが互いを同じ温度で想い合うような……そんな関係を夢見ていたんです。
今でも思い出す、白の誓い。
陛下の想いを汲まれて、それでもその手を離さないと誓われた背中。

あの時、隣に立つ北山の手を握りながら、確かに俺も誓ったんだ。
北山を愛しいと想う気持ちは、今も涙よりも溢れるけれど。
誓うほどに愛してるから、だから終わりにしよう。









綺麗なままで。

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