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俺は、完全に酔っていた。
口にしたアルコールが血液に溶けて、全身に回っていた。
思考能力は、いつもの半分以下だったろう。
「えーっ!?何処何処!?」
二階堂が、俺の言葉に反応して肩を揺する。
やめろ、酒が回る。
そんな様な言葉を吐いて、二階堂の手を振り払った時だった。
横尾さんに何かを耳打ちして席を立つ藤ヶ谷の姿が見えた。
「藤ヶ谷?」
呼びかけたけれど聞こえなかったのか、藤ヶ谷はそのまま振り向くことなく席を立った。
その背中が、ひどく儚く見えたのは何故だろう。
「たいすけ、明日のために帰るってさ。」
そんな俺に、これまた酔っ払った横尾さんが返事をする。
横尾さんも余程嬉しいのか、ここまで酔うのは珍しいというか初めて見た。
「ミツー……飲んでるー……?」
緩くふわふわの雰囲気を更にふにゃふにゃさせて、玉が俺に凭れかかってくる。
リーダーに任命された玉は、驚いていたけれど意思を固めて頷いていた。
玉の伸び代は、絶対に俺よりもあるはずだ。
まだまだ何かを秘めていそうな玉の力は、これからの俺達に絶対に必要になるはずだ。
昨夜、柔らかな月明かりの下で、紅様にそう進言した。
正直なところ、藤ヶ谷と玉のどちらを推そうか迷ったのも事実だ。
けれど俺は、隣で笑う玉の笑顔に己の選択が間違ってないと確信する。
コイツは、まだまだ伸びる。
玉が、どんな歌うたいになるか楽しみだった。
「ミツー……俺は、ずっと弟だからねぇ……」
酔っ払って呂律も怪しい玉が、俺の肩に頭を預けながら呟く。
言ってる意味を理解してるんだかしてないんだかよくわからなかったけれど、リーダーを任された玉の逃げ道としてその肩書きが必要ならそれでもいいと思った。
今にも零れそうになってる玉のグラスを取り上げて、その手で頭を撫でた。
猫みたいに、瞳を細めて気持ち良さそうに笑う玉が可愛かった。
「んふふ〜……ミツは、俺に甘いよねぇ……」
「わかってやってるだろ、オマエ。」
それでも、撫でる手を離さない俺にも自覚くらいはあるのだ。
もう嫌だと泣いていたあの日の玉を、今でもよく覚えてる。
まだそれほどの時間が経ったわけでもないのに、玉もまた大人の顔付きになりつつあった。
少し後で、支えてくれる相手がいるのも大きいんだろうな。
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流華(プロフ) - sioriさん» sioriさーんo(^o^)oどっちも悪くなくて、どっちも悪い(笑)言葉足らずの二人(笑)長編!?いや、これでも長いって(笑)もう少し短くまとめたかったのにー(^_^;)頑張って書くーっ♪ヽ(´▽`)/ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - SIZUKUさん» SIZUKUさーん♪♪いつもありがとうございます(*´∀`)♪ドキドキと言っていただけて嬉しいです♪ヽ(´▽`)/もう、詰め込み設定は悪い癖ですホント(笑)お話から情景を感じ取ってくださるSIZUKUさんの感性、大好きですー(///ω///)♪ (2018年6月8日 11時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
siori(プロフ) - 流華さぁん(o^^o)壮大な世界観に毎回引き込まれてるよ〜!ミツと太輔の心情が痛くて(TдT)もう、どうしたら〜。物語を彩る美しい情景にもうっとり♪もっと長編プリーズ!っと、ワガママな事を言う読者(笑)移行頑張って!楽しみにしてるぅ!めっちゃ!(//∇//) (2018年6月3日 19時) (レス) id: 6d214b6dc8 (このIDを非表示/違反報告)
SIZUKU(プロフ) - 流華さーーん!素敵なお話をありがとうございます。ドキドキします。終わりが来て欲しいような、そうでないような笑 流華さんのお話を頭の中で映像化するもなかなか。だから引き込まれていきます。また更新を楽しみにしてます。 (2018年6月3日 0時) (レス) id: a2eddefbd9 (このIDを非表示/違反報告)
流華(プロフ) - あーさん» ああ、すみません……早とちりを(汗)お気遣いの言葉ありがとうございます(#^.^#)亀更新ですみません(^_^;)頭の中では出来上がっているのですが、文字に起こしている時間が(笑)ゆっくり進めて行きますねー♪ヽ(´▽`)/ (2018年5月26日 12時) (レス) id: b5b973b1e3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:流華 | 作成日時:2018年3月22日 17時