紅桜の鎮魂歌 第二章

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言葉は、出なかった。
淡く優しく色付く、それ。

固まっていた俺達七人、全員が柔らかに光る。

呆然と見上げる虹色。

グッと左手を力強く握られた。



そちらを向いた俺。
こちらを見ていた藤ヶ谷。



これは。









…………夢、じゃ、ない……？









俺は、思わずその手を引っ張った。
バランスを崩した藤ヶ谷が、玉に体当たりしそうになってるけど、そんなのどうでも良かった。

抱き締めたかった、藤ヶ谷を。
誰よりも、内に秘めながら歌うたいを切望していた藤ヶ谷を。

共に歌うたいになれたことを喜びたかった。


その瞬間。


俺は、強い力で後ろに引っ張られて……









藤ヶ谷と繋いでいた手がほどけた。









え─────……？



そして、強く抱き込まれた。
俺の身体に回る腕。

その瞬間、理解する。
俺は誰かに抱き着かれたのだと。

そして、こちら側で俺の隣にいたのは……


「っ……ふっ、……くっ……」


後ろから肩に押し付けられる頭。
漏れる嗚咽。
ツンツンの髪が、首筋に当たって擽ったかった。


「ミ"ツ"ゥゥゥ……」


情けないような涙声。

俺が抱き締めたかったのは、藤ヶ谷だ。
それは間違いない。でも。
コイツの想いもわかるから無下にすることも出来ない。


あー……もう、仕方ねぇなぁ……。


「俺よりでかい図体してメソメソ泣いてんじゃねぇよ、二階堂。」


そう言いながらも、そのツンツン頭を後ろ手に撫でてやった。
挫けそうな心を抱えていたのを知っているから。
そうして視線を前に戻すと、横尾さんの肩に顔を埋めている藤ヶ谷の姿があった。


ざわり、と、また嫌な感情が顔を覗かせた。


藤ヶ谷の頭を撫でる横尾さんの手。









─────触るな。









そう思って、そう思った自分に驚いた。
余りにも暗い感情だったそれ。

うわ、……。
何を思ってんだ、俺は。

そう思って頭を振っていると、今度は前から抱き着かれた。


「ミツっ……」


こっちもか。

玉が、半泣きで抱き着いてきた。
自分よりも大きな男二人が、前から後ろから泣きながら抱き着いてきている状況は、傍から見たらどう見えるのか。
ぎゅうぎゅうに抱きすくめられる俺の視界には、玉の胸でいっぱいで……その向こう側にいるはずの藤ヶ谷は全く見えなくて。
子供のように泣きじゃくる二人を、宥めていた。





本当に、目に見えるものしか、わかってなかった。

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