紅桜の鎮魂歌 第二章

※ ページ19

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抜けるような青い空に響く澄んだ鐘の音。
続々と大講堂に集まる候補生達。
少しの緊張と、大きな期待。
何度経験しても慣れない、この状況。

虹の祝福。

これまで、いつだって天は俺達には優しくなくて。
何度も涙を呑んだ。
憤りと悔しさと、複雑に絡み合った想い。
それでも。
諦めるなんて出来ないから。
そこに、夢があるから。

だから。

カタンと小さな音がして、大講堂の奥の扉が開く。
真っ白な式典装束に身を包んだ陛下が姿を現して。
候補生は一斉に胸に手を当てて頭を垂れる。
我らが皇帝陛下に敬礼を。

そして、顔を上げると。
そこに。

場がどよめいた。
あちこちから、何で、どうして、と声が上がる。

虹の祝福は、候補生と陛下の祭事だ。
陛下の後方に控えるその姿は。



紅様─────……？



「動揺させてすまない。見届けたいと言うのでな、特例だが許可をした。」


陛下の声と共に、紅様が凛とした表情を崩さないままに一礼した。
何も言葉を発していないのに、そこに在るだけで存在感を放つ。
そのお姿に、しばし見惚れた。

そして、顔を上げた紅様とバチリと視線が合った気がした。
こんなに多くの候補生がいる中で、有り得ないはずなの、でも確かに。
その視線が、俺を見ている気がした。

その時。

ゆっくりと、紅様の唇が動く。









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──────上がってこい。









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その唇が音もなく、そう象った気がした。
俺の願望かもしれない。
もしくは、ここにいる全員に告げた言葉なのかもしれない。
それでも。
俺は信じる。

あの方が、俺を待っていてくれる。
他の誰でもなく、俺を。

だから俺は────。









歌うたいに、なる。









不意に、左手に温もりを感じた。
横を向くが、左隣にいる玉は少し緊張した顔で陛下を見つめていた。
そうして、左手に視線を移せば、その手は玉の向こう側から伸びていた。


藤ヶ谷……。


玉の向こう側に立つ藤ヶ谷の長い右腕が、玉の背中を通って俺の左手に伸ばされていた。
俺も少しだけ左腕を伸ばして、強くその手を握った。
それを感じた藤ヶ谷が甘く柔らかく笑った。









俺の、愛した藤ヶ谷だった。

※→←虹の祝福 Ki

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